- 2024.10.04
- 特集
「室内でジンギスカンやる時は必ず……」「冷蔵庫代わりの発泡スチロール」――小樽を舞台にした朝倉かすみさん最新作『よむよむかたる』に北海道からも続々と反響が!
『よむよむかたる』(朝倉 かすみ)
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
『平場の月』『にぎやかな落日』など数々の作品で鮮烈な印象を残す朝倉さん。9月19日に発売された最新作『よむよむかたる』は、自身の母の参加する「ちいさな集まり」に着想を得た心温まる小説です。
喫茶シトロンに毎月集まるのは、下は78から上は92歳までの6人の老人たち。本を片手に「ヤァヤァ、どうも、どうもでした」と集まれば、思い思いに本を朗読し、感想を述べあう。仲間の声に耳を傾け(傾けないことも多々)、自由で和やかな(時に剣呑な)時間が流れてゆく――。
そんな読書会を巡る新刊には、発売前に見本版を読んでくださった書店員さんから反響が続々。全国から届いた感動の声をお届けします!(第4回/全10回予定)
ジュンク堂書店旭川店 松村智子さん
古い青い鳥文庫を引っ張り出して、一緒に読書会に参加させて貰っている気分で読ませて頂きました。『だれも知らない小さな国』と相まって、老人たちの言葉やその佇まいに、自分が子どもの頃に過ごした日々が思い起こされる作品でした。
初めは動画を見ているように、違う世界を観察しているようなスタンスで老人たちの仲間に加わった安田が、メンバーそれぞれの在り方を理解し、受け入れていく姿にかつての自分を重ねて、懐かしい日々を思い出しました。私もコロナ禍の前まで老人中心の団体(箏と尺八の合奏団です)に一人若手(中年ですが)で加わっていて、一番の下っ端として練習場所の予約やセッティング、荷物運び、連絡係と色々振り回されながら活動していました。皆、耳が遠くて話が一回で伝わらない、どんどん脱線していく、前回言ったことを忘れて違うことになる、もうあるあるで、それでもその場にいる時は、本来の自分とは違った優しい自分がいて、「若い人がいると助かる」といつも言われて、その場の自分は本当に好きでした。なので安田の状況に共感しか覚えませんでした。残念ながら合奏団はコロナ禍を越えることができず解散しましたが、読書会は続いていきそうで羨ましい限りです。
もう一つ懐かしかったことは、今はなかなか聞かなくなった北海道弁がたくさん生きた言葉として語られていたことです。体感的には自分が子どもの頃に上の年代の方々の言葉に見られたくらいでギリギリ理解できるものです。意味は分かるけれど、もうほとんど使われていない言葉が老人たちから発せられて、昭和に戻ったような心地がしました。蝶ネクタイさんが毎回ちゃんと翻訳してくれるのが良いですね。道民以外の方がモヤモヤしたり、調べるために読むのを中断しないで済みますし。
玄関フードの雪かき道具と漬物樽と蓋付き発泡スチロールの箱、今でも北海道では見られる情景ですが、やはり懐かしさを感じます。魚釣りじゃないよ、冷蔵庫代わりにちょっとした食べ物や貰い物(それこそ「かま栄」のかまぼことか)が入っているんだよと思わずツッコみました(笑)。そう、室内でジンギスカンやる時は必ず新聞紙ひきますよね。長らくそうして暮らしてきたんだという実感がひしひしと伝わってきます。
読書会の発足時の写真のエピソードのエモーショナルさに胸を撃ち抜かれました。ちゃんと繋がっている、生きている、それぞれが呼びかけて応えている、彼らと安田と井上さんが再会したことは必然だったのだと確信しました。
こんな読書会に参加できたら、泣いたり笑ったり本当に楽しいだろうなぁとしみじみと思いました。
未来屋書店西岡店 竹内由紀子さん
本に対してまずリスペクトがある。だから対立も分裂もしない。読書会って理想のサークルかもしれませんね。健やかな癒やしの場。自立を形成する場。「これについてどう思うか」という問いに対して自由な意見を述べられるし、どんなに相違していても興味を持って聞ける。柔軟性や包容力は人を魅力的にしますね。余生短い超高齢者読書会なのでお迎えもやはりありますが、人生振り返ればこれで良かったとニッコリできる充実感を味わえます。
未来屋書店発寒店 宍戸和美さん
読書会を通じて語られる老人たちの人生から、自分の内面を見つめる若者……
というある意味ステレオタイプなイメージで読み始めてしまった事を大反省。
読み終えて残るのは、死の影。一見自由気ままに見える彼らが “死神を待っている” かのように思える、心がすっと冷え込むようなシーンには、深く感動しました。
(個人的な事ですが、私にとって馴染み深い町が舞台という事で、読んでいる間テンション上がりっぱなしでした。小樽文学館は大好きな所です!)
函館蔦屋書店 宮成珠美さん
本を紹介したりおすすめしたりする仕事をしているのですが、自分の感想を人前で話したりすることは、とても恥ずかしく、読書会のようなイベントからは逃げておりました。特に、大好きな本や感銘を受けた本については話せずにきました。あーでもいいですね、読書会。今すごく話したくなっています。
安田の目と語りで浮かんできた読む会の面々は、もう本当にそこにいる人のよう。
みなさんに会いに行きたくなっています。記念誌に寄せたマンマのエッセイに泣き笑い……
「その人でしかなさ」を見せ合える、本を通じての関係に胸がいっぱいになっています。
喜久屋書店小樽店 渡邊裕子さん
人と触れ合うやさしい時間とかざらない言葉が、生きつづけることへのわだかまりや死へのざわめきをすくいとってくれるようだ。
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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