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「東野圭吾を爆流(バズ)らせろ!」忘れられない落選タイトル7選

「東野圭吾を爆流(バズ)らせろ!」忘れられない落選タイトル7選

「文春文庫」編集部

「東野圭吾を爆流(バズ)らせろ!」インパクトを残したタイトル集

出典 : #文春オンライン
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

【最優秀賞発表】福山雅治さんも巻き込んだ「ガリレオ」シリーズ異例のキャンペーン! 応募総数2万9000件の頂点に輝いたタイトルに、東野圭吾さんも「完璧です」と太鼓判〉から続く

 東野圭吾さんの大人気「ガリレオ」シリーズの10作目『透明な螺旋』文庫発売を記念して開催されたキャンペーン「東野圭吾を爆流(バズ)らせろ!」。読者から寄せられた新作タイトル案は、なんと2万9000個超!

 多数の応募作の中から、惜しくも選外だったものの、編集部員たちが「実に面白い」と忘れられない秀逸なタイトル案を、選考理由とともにご紹介いたします。独創的な発想と日本語の奥深さを堪能できるタイトル7選をご覧ください。

◆◆◆

①笑いの奥に潜む人間心理――心洗う(わらう)/心隠う(わらう)

笑いにもいろいろなニュアンスが…(イメージ)

 最初にご紹介するのは、「KY」さんからの「心洗う(わらう)」と、「たこの寝返り」さんからの「心隠う(わらう)」という、対照的な2つのタイトルです。

 誰もが笑顔で過ごせる日々を願う一方で、この2つのタイトルは私たちに深い問いを投げかけます。笑うことで心が浄化される「心洗う(わらう)」と、本心からの笑顔ではない「心隠う(わらう)」。どちらも人間の複雑な感情を表現しており、2つを並べてみると、笑いの奥に潜む人間心理を深く突いたタイトルだと感じました。

②良心と復讐心の狭間で――私刑く(さばく)

「私刑く(さばく)」という、重みのあるタイトルを提案してくださったのは「UR-Z」さん

 法で裁くのではなく、私的に制裁を加える「私刑」という言葉は、法律的にも倫理的にも許される行為ではありません。しかし、被害者感情と深く結びついている言葉であるのも事実です。「人は人を裁くことはできない、だが…」と良心と復讐心の間で葛藤する人物は、ミステリー小説にしばしば登場します。このタイトルは、そういった人間の心の闇を鋭く抉り出しているように感じます。

③思考の遅効性に心掴まれる――青林檎夫人る(みせすぐりーんあっぷる)

青リンゴ(イメージ)

「青林檎夫人る(みせすぐりーんあっぷる)」という、一風変わったタイトルを考案してくださったのは「ぴろぴろ」さん

「あおりんごふじん」という日本語の語感から受ける印象と、アーティストの「Mrs. GREEN APPLE」という英語表記から受ける印象が全く異なる点が非常に面白いと感じました。パッと見ただけでは意味不明なタイトルですが、少し考えると「ああ、なるほど!」と腑に落ちる…この思考の遅効性に心を掴まれました。「Mrs.」を「夫人」と訳している点もセンス抜群です。

④ふわふわした愛しさの表現――猫愛る(もふる)

「もふもふ」される猫(イメージ)

「猫愛る(もふる)」は、「ぽたぁじゅ」さんからのご応募です。

「もふる」という動詞での応募は多数あり、この言葉がすでに一般用語として定着していることを実感しました。では、どの漢字を当てるのか。「触る」というシンプルな動詞よりも、「もふもふもふ~」と触らずにはいられない衝動、対象への愛情がより強く表現されているのは「愛する」という言葉だと感じました。「猫」と限定していいのかという議論もありましたが、「もふる」という言葉がより一般的になれば、「犬愛る」「兎愛る」など、動物の種類ごとに漢字を当てはめるのも面白いかもしれません。

⑤夏の終わりを告げる鳴き声――蝉終る(セミファイナル)

「蝉終る(セミファイナル)」は、「かたこと」さんからの応募作品です。

実は「セミファイナル」という読みの応募は複数ありました。その中で、短い人生(蝉生)の終わりを表現しているという点で、最終的に「蝉終る」という漢字の組み合わせに最も感じ入りました。夏の終わりに地面に落ちてきたセミが、力尽きる直前に最後の力を振り絞って鳴き声を上げる切なさ、そして物語のクライマックスへと繋がる緊張感を最もよく表現していると思い、選出させていただきました。

⑥句点1つでクスリと笑える――威圧る。(マルハラる)

「マルハラ」について考える女性(イメージイラスト)

「ペコポン星人」さんから応募いただいたのは「威圧る。(マルハラる)」。

 まず「マルハラ」という言葉を知らないおじさん編集部員もいましたが、若い編集部員にその意味を教えてもらい、「なるほど!」と納得。メッセージで句点を使うことで威圧感を与えてしまう「マルハラスメント」のことだそうで、現代社会ならではのコミュニケーションの難しさが表現されています。そして、漢字や言葉に強さがありながらも、タイトルの最後にしっかり「。」を付けているユーモアセンスに、思わず笑わせていただきました。

⑦波間の一艘(いっそう)に揺れる心――丿乀む(なやむ)

波間に揺れるヨット(イメージ)

「丿乀む(なやむ)」というタイトル案を応募してくださったのは「馬のゆい」さん

 最初にこのタイトルを見たとき、編集部一同、正直なところ「何と読むのだろう?」と頭を悩ませました。調べてみると、「丿」(へつ)と「乀」(ほつ)は書道用語で、それぞれ左払い、右払いを表す漢字でした。そして、これらを組み合わせた「丿乀」(へつほつ)は、「小舟が波間に漂うさま」を表す熟語なのだそうです。

 実は、人気クイズYouTuberであるQuizKnockさんの動画にも、同じ漢字を使ったタイトル案が登場していました。しかし「馬のゆい」さんは、この動画がアップされるより前、キャンペーン募集が始まってかなり早い段階で応募いただいていました。

 まず熟語の知識に驚かされましたし、小舟が揺れるさまに人物の揺れる心を重ねて「なやむ」と読みがなを当てた発想はお見事。言葉遊びの要素もありつつ、ミステリーとしてどんな作品になるのだろう?と思わせてくれる、魅力的なタイトルだと感じました。

 

 これらのタイトル案は、応募作品のごく一部です。すべてをご紹介できないのが残念ですが、ほかにも多くの印象的なタイトルが寄せられました。編集部一同、読者の皆さんの発想力と日本語の豊かさに、改めて感銘を受けました。

 東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズは、直木賞受賞作『容疑者xの献身』を含む、累計1500万部突破の大人気シリーズ。ドラマ、映画では福山雅治さんが主人公の天才物理学者・湯川学を演じて大ヒットしました。

 全10作中、短篇集は『探偵ガリレオ』『予知夢』『ガリレオの苦悩』『虚像の道化師』の4作。また『透明な螺旋』には短篇「重命る(かさなる)」が特別収録されています。ぜひガリレオの数々の名篇を読んで、内容やトリックとともに、タイトルの素晴らしさも味わっていただけたらと思います。

文春文庫
透明な螺旋
東野圭吾

定価:880円(税込)発売日:2024年09月04日

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