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「まるで鋭い凶器に何度も切りつけられるような感覚」「心の内は今も震えている」塩田武士さん最新刊『踊りつかれて』に圧倒された書店員による感想2万2000字を一挙大公開!

「まるで鋭い凶器に何度も切りつけられるような感覚」「心の内は今も震えている」塩田武士さん最新刊『踊りつかれて』に圧倒された書店員による感想2万2000字を一挙大公開!

『踊りつかれて』(塩田 武士)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

まだまだ続きます!

31 平和書店アル・プラザ城陽店 奥田真弓さん

キャッチーなオープニングから
人間一人一人の人生を丁寧に描いていく、
光と影が、その人生の輪郭を際立たせる。
その過程がまさに塩田武士。
昭和から平成、平成から令和。
注目を集める芸能人、有名人に対し、
露悪的な好奇心を持ち、常に完璧を求める、
大衆の暴走は形を変えつつも常にある。
誰もが思い当たるところがあるのではないか?
私たちは、決して傍観者ではいられない。
今や出来心と親指一つで他人の人生を吹き飛ばせる。
その自覚を持って生きなければならない。
とても面白かったです。

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32 ジュンク堂書店上本町店 光定真美子さん

素晴らしい作品でした。一言で言い表すならこの言葉しかないというほど、考えさせられたし驚かされたし感動させられました。
スマホやPCの画面に阻まれ、罵る相手を同じ人間と認識できない現代への問題提起。予想外の人間関係が、人はたくさんの繋がりの中で生きていると教えてくれます。最後のタオルのシーンは本当に感動的で、それと同時に天童が生きていたらと思わずにいられませんでした。どれだけ過酷な状況でも死んではいけない。ある人には警告に、ある人には強い励ましとなる物語だったと思います。

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33 水嶋書房くずはモール店 井上恵さん

なんだかリアルすぎる始まりと、この作品を週刊文春で掲載していたという事実に驚愕しながら読み始めましたが、SNS上の言葉の裏側にいる生身の人間それぞれの人生が重くのしかかってきてどんどんと物語に飲み込まれていくようでした。
SNSを楽しんでいるつもりがいつしか自分と他人を比べ真偽不明の言葉を信じこみ振り回されてはいないだろうか。匿名性をかさに着て面と向かっては言えない言葉を誰かに投げつけてはいないだろうか。これはまさに現代の社会問題だと思った。読み応えのある凄まじい熱量の作品でした。

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34 有隣堂藤沢店 廣田優里さん 

SNSの炎上と誹謗中傷。これは現代社会に限った闇ではない。一人の告発者が見つめてきた輝く才能の奇跡と凋落を辿っていくにつれ、テクノロジーがいくら進んでも、私たちの現在は過去からずっと接続していることを、現代の価値観や正しさは自分たちが突然賜ったギフトでもなんでもない事を強く認識した。もしも、つい感情的になって画面の向こうに強い言葉を吐き出そうとした時に、最後の送信ボタンを押す時に、そこで少しだけ相手の人生を思いやりとどまる事をこの小説が思い出させてくれたらいいと思いました。

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35 水嶋書房くずはモール店 和田章子さん

本音を言えない表面的な人間関係しか持てず軽い気持ちと憂さ晴らしのため
SNSで誹謗中傷する令和の人たち。
誹謗中傷してジョージを死に追いやった人々をSNSに晒した瀬尾
瀬尾と美月をめぐる芸能界とその周辺の事情が綿密に描かれ、
弁護士奏と昭和の別府で起こった不幸と貧しさによる悲惨な暴力支配は読むのも辛いシーンでした。

悲しい別れがあっても男女を超えて魂の奥底で深く誰かとつながることが人生を味わい深いものにしてくれること 
ほんの一握りのプラットフォームに人生の時間を奪われている2025年に生きる人々に塩田先生が警鐘を鳴らされているようでした。

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36 正和堂書店鶴見店 猪田みゆきさん

昭和、平成の週刊誌と平成、令和のSNSの罪と罰によって大切な人を喪った一人の人の叫びがもたらしたもの。
それは、法でもシステムでも簡単に解決できるものでは無いのかもしれない。
人、というのは自分の価値観が正義だとなぜか思い込んでしまう生き物だと暴いている作品。
私のこのコメントも正しいのか、誰も傷つけないのか。そんな保証はどこにもないけれど、それでもコメントを見たあなたに読んで欲しい。
人は踊りつかれるまで、人生を生きねばならない。そのこととつかれたからと、人を弄ぶ行ないで自分を甘やかすのは異なることなのだと共に考えて欲しい。

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37 くまざわ書店稲沢店 大洞良子さん

正義という名の仮面を纏ったSNSが匿名性のある凶器となり
これはフィクションなのか? ノンフィクションなのか?
普通の人間が加害者となり被害者にもなる危険性を問いかけながら
人々の人生と過去がパズルのピースのようにはまっていき
真実が浮き彫りにしていく様に心が震える

終盤の一文
「何で戦時中みたいに息苦しいんやろ。ひょっとして、今戦時中なんか?」
突き刺さったこれは著者の強いメッセージだ

時代を超えても変わらないひとの醜い部分が濃い影を落としながらも
救いの光が差すような読後の不思議な高揚感は
まだ未来に希望を持ち続けていいと感じさせてくれた

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38 東京旭屋書店新越谷店 猪股宏美さん

数々の文春砲を撃ってきた文藝春秋からこの作品が出るなんて。
読み進める中でそれぞれの人物の人生の物語や繋がりに思いをはせ、SNSや刺激的な情報に踊らされている現状にうんざりさせられる。
他人の不幸は蜜の味なんてなくなればいい。
他人に向ける悪意には鈍感なくせに、自分に向けられる冷ややかさには敏感だなんてどうかしている。
ほんのちょっとの優しさや思いやりはもう物語の世界にしかないのだろうか。
お互いが寛容でおおらかに。
この物語を読んで、どこか間違っているって気付いてくれよ。みんな。

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39 紀伊國屋書店高槻阪急スクエア店 北辻祥子さん

正しさとは何か。自分の考えは正しいからと、間違いをおかした人に声高に叫んでその人を必要以上に傷つければ、もうその瞬間からその「正しさ」は他のものに変質してしまっているのではないか? 
自分の言葉が誰かを傷つけはしないか、この言葉あふれる現代でよく考えた上で発信することはもちろんだけれど、誰も傷つけない事はありえないのではとも思う。
それでも何かを訴えるなら、自分のした事に責任を持つ。そうありたいと思う。
生きてこそ 
この言葉が最後に深くささりました。無数の安全圏からの悪意ある言葉によって、
今後命を断つ人が出ないよう、強く願います。

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40 紀伊國屋書店広島店 藤井美樹さん

気付くと息を詰めていて、慌てて深呼吸。そんなことを繰り返して読み続けました。
大切な人を失った男の復讐譚、だなんてあらすじで括らせないという書き手の意図、これでもかという執念。
瀬尾、美月、天童、という中心人物の人生を弁護士の奏が丹念にほぐしていくことで
彼らがSNSの中で単なる消費される情報などではなく、生きている生身の人間であることを大量のページで証明してくれる。
ネットを介在しての直線的な犯罪が顕在化でする中、間接的な犯罪がどれだけの人の心を追い込んでいるのか。
読み終えた時どうかその一歩を踏みとどまって考えて欲しいという祈りを感じました。

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41 紀伊國屋書店武蔵小杉店 鶴見真緒さん

冒頭の宣戦布告で完全にやられた。脳天まで痺れた。
また塩田武士が世に一石を投じてくれたのだと確信した。
それもサイコーに磨き上げられた鋭利な石を。
前作の『存在のすべてを』がはまった人は、絶対こちらもはまるだろう(もちろん私も)。なぜこうなった、何が彼をここまで突き動かしたのか、真の思いとはなんなのか、と紐解いていく塩田節が気持ち良く、あれよあれよという間に一気読み。
なぜ人間とはこうなのだろう、神にでもなったつもりで人様を裁くことをやめられないのだろう、という諦念と、でも地球上の全員が『踊りつかれて』を読んだらこんな馬鹿な祭りはなくなるんじゃないかという一縷の希望を抱かずにはいられない。

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42 ジュンク堂書店郡山店 郡司めぐみさん

自分は分かっているつもりだったのに、SNSの誹謗中傷やマスコミが
こんなにも誰かの人生を狂わせるのかと強い衝撃を受けました。
正確性のない悪意にまみれたコメントが発信されていることに対して警鐘を鳴らすだけでは終わらない。犠牲になった芸人の苦悩、アーティストの壮絶な過去、二人の才能を信じて支え続けた人たちとの人間ドラマが強く心に突き刺さる。
どんなに非難しても誹謗中傷は無くならないかもしれない。
まず冒頭の宣戦布告を読んでほしい。
多くの人がこの現状から目を逸らさず大きな問題として認識することができれば、いずれ社会全体に広がって誰かの考え方を変えるきっかけになるかもしれない。
それだけ強いメッセージ性のある作品だと思いました。

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43 ジュンク堂書店三宮店 三瓶ひとみさん

SNSが無責任に発する怖さを誰もが感じているにも関わらず、
つい無防備にストレス発散のように書き込んでしまう。
その危険性を改めて思い知らされる“宣戦布告”に読者も鳥肌が立ったのではと思う。
そこで終わらないのが塩田武士だ。
加害者の弁護を請け負った久代奏のまっすぐな心を通して、隠れた真実を丹念な取材で炙り出していく。壊れたパズルのピースを集めるように。そして加害者と天童、美月との意外な関係がピンと糸が張ったように読者の前に現れた時、興奮がおさまらない。
後半に入るにつれ、リーガルサスペンスの旨みや昭和芸能界、そして闇社会、
いろんな局面が加算され、昔も今も変わらない社会の歪みの中でどう生きていけばいいのかを考えさせられた。

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44 文教堂河内長野店 越賀知春さん

子どもの頃に言われた「自分がされた嫌なことは人にもしない」は、
ネット上ではなかったことになるらしい。
大人になったら、当然知っている社会のルールも、
思いやりも想像力も、匿名性の中では忘れてもいいらしい。
輝きを奪われた2人と、報復しようとした男、
そして男を助けようとした弁護士の女性。
その4人を繋ぐ過去には、光への強烈なあこがれと周囲の闇と、あまりにリアルな心情があり、よくも何も知らずに……と怒りと悲しみが湧き出す。
恐怖のために動けなくなることは当然だ。
それでも、大切な人と夢の続きを見たい。
一緒に夢を見て、一緒に飛びたいと人は願う。
闇を照らすのもまた人間にしかできないのだから、たとえ匿名でも、自分の言葉は誰かを守り、翼にもなることを知ってほしい。

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45 六本松蔦屋書店 峯多美子さん

当事者でもないのに息が止まるほどの生々しくて刺々しい罵詈雑言の数々に、
心が痛み、美月の凄まじい生い立ちが明らかになるにつれ、
胸が苦しくて、心が挫けそうになりました。
それでもこの物語を私は美しいと思います。

美月と瀬尾の関係性も歌というものに対しての
姿勢も持って生まれた才能も、努力も終幕に至る美月の歌う姿も、
苦しくて切なくてそしてとても美しいものでした。
それだけに才能ある一人の歌い手をそこまで追い詰めて、その世界から抹殺せしめた匿名で守られた状態で暴走するネット民たち、ネットの中のふつうの人々の恐ろしさと残酷さに憤りと同時に虚しさを感じました。
辛い部分も多分にありますが、切なく美しい余韻を残すこの作品が、いま辛い日々を送っている人たちに届くことを切に願っています。

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単行本
踊りつかれて
塩田武士

定価:2,420円(税込)発売日:2025年05月27日

電子書籍
踊りつかれて
塩田武士

発売日:2025年05月27日

プレゼント
  • 『いけないII』道尾秀介・著

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