『宙色のハレルヤ』(窪 美澄)

『じっと手を見る』『ぼくは青くて透明で』『夜に星を放つ』など、心に沁み入る作品を次々書いてきた窪美澄さん。最新作『宙色のハレルヤ』は、さまざまな形の愛と恋を描いた6編を収録した珠玉の恋愛小説集です。

 惹かれ合う2人の女性に子供の塾で再会した男女、目の前に突然現れたかつての想い人の面影……。

 人を思う気持ちを前に「ふつう」なんてある? 私のこの想いに“名前”をつけるなら?

 そんな気持ちを掬いあげてくれる作品に、全国の書店員さんから共感の声がたくさん届いています。


紀伊國屋書店久留米店 池尻真由美さん
行間から滲み出てくる想いが、眩しいほどにきらめいていた。一編一編を大切に、噛み締めながら味わう。 
忘れられない、断ち切れない、揺れ動くどうしようもない切ない気持ち。自分の感情に嘘はつけない。リアルな息づかいを感じ、はっきりと映像が浮かんできた。
胸が苦しくなったあの夜の、いつかの自分が重なり、胸がいっぱいで何度も涙が滲んだ。
心が解き放たれる解放感。ままならない恋に生きる、不器用な登場人物たちの全てを肯定してくれる、著者の眼差しの優しさが心に染み入る。じわじわとあたたかさが広がっていった。
悩んでもがいて傷ついて、私たちは一歩を踏み出していく。いつかきっと……が詰まっていて、心が震えた。痛みの先に光はあるのだと、ほのかな希望を感じた。
苦しく切なくも、優しくて、とても美しい宝石みたいな小説。
心に優しい余韻を残してくれたこの物語を、私はきっと、何度も、読み返すだろう。
苦しさと優しさが同居していて、私の心の奥をぎゅっと掴んで離さない、本当に素晴らしい作品でした!!

紀伊國屋書店福岡本店 宗岡敦子さん
大切な哀しみや痛みから生まれた、切ない愛の物語。男女という性別を超えた、言葉にし難い心のつながりに深く魅了されました。
人間関係での摩擦や亀裂。
心変わりの寂しさや苦しさ。
社会と自身の間で揺れ動くアイデンティティ。
そんな、人と人とがつながる事で生じた傷に向き合い、自身の生き方を模索する様子に、私の心も重なりました。そして、消化できない気持ちを抱えながらも、明日に対峙していく姿に、静かな勇気が広がりました。
迷い彷徨うことで開かれていく、人生の深みが増していくような心の成熟を感じる短編集。それぞれが最後に選んだ答えに、不安や葛藤が解き放たれていく新しい風に包まれました。
どの物語も、繊細な世界観に溶けるように引き込まれましたが、特に「海鳴り遠くに」が印象に残っています。
自分の気持ちほど、分からないものはない。
本当に伝えたい想いは、簡単に言葉にはできない。
その、もどかしくやるせない心情が、胸にじんわりと沁みました。
私にとって本作は、すれ違う風を両手でそっと包み込み、もう一度絆を結びなおすようなラブ・ストーリーでした。
秘めていた本心がゆっくりと花開き、新たな物語が続いていく兆しを感じる、とても素敵な作品を拝読させていただき誠にありがとうございました!

TSUTAYAサンリブ宗像店 渡部知華さん
愛のカタチ、想いのカタチは様々で、どんなものだって肯定したい! そんな気持ちが溢れる一冊。人とは違うかも、ふつうじゃないかも、この気持ちはなんだろう……自分の気持ちと向き合うのは怖いけれど、この作品に出てくる登場人物たちをみていると、勇気をもらえます。
そして、想っている相手は全然違うのに、共感する感情ばかり。
「あんなにつらい思いをしたのに、また誰かを好きになろうとしている。」なんて、まさに恋愛あるある! 苦しいけどそう!!
あとは、「だから『ほんとう』を悟られてはならないと自分の心に誓った。木に化ける蛾のように、自分は擬態を続けた」のところも、私はめちゃくちゃ共感できて、胸が苦しかったです……!
それでも、なにも否定せずに背中を押してくれるような物語は、読んでいてほっとします。「好き」からこんなにも広がる世界。甘さとしょっぱさがちょうどいい作品でした。

有隣堂ららぽーと海老名店 塚田亜紀子さん
些細なすれ違いで人生が変わる。一言が言えなくて俯いてしまう。人間の繊細な表現が各章ごとに現れていく。
ふと見上げると空は宙に変わってどこまでも歩いていけるような勇気を与えてくれる。素敵です人生って。

K.M.さん 
どのお話もよかったな~
甘かったり、苦かったり……いろんな形の愛や恋……でも、それが人生だ! と思いました。

アバンティブックセンター寝屋川店 永嶋裕子さん
出会って別れて、別れて出会って。どの短編も、それぞれのひとの人生の核みたいな一場面が切り取られていて、それを見せてもらっているような気分になりました。
どの人の物語も、理不尽だと思うことも悲しい結末もあるけれど、不思議と清々しく感じるのは、誰もが清も濁も受け入れているからなのかもしれない。
どんよりしてるのに、雲間からは光が射しているような短編たちでした。

文真堂書店ビバモール本庄店 新井さゆりさん
鮮烈な恋と愛の物語に、胸を焦がします。
熱く、苦く、甘い心理描写に心が揺さぶられ、登場人物の葛藤や迷い、過去との対峙を追体験することで、自分の孤独と愛情のかたちを再認識することができました。
愛のかたちは自由で、多様で、美しい。その真実を静かに、しかし鮮烈に思い知らされることで、心が解き放たれていくのを感じます。

精文館書店豊明店 富田晴子さん
誰かを思うって実は厄介だ。思う通りにはいかないのに、いつの間にか飛び込んでしまう。出会い、別れ、ときめき、嫌悪。喜びも悲しみもも全て己を形作っていく大切な一欠片。そんな欠片を手のひらいっぱいに集めたような一冊だ。