『じっと手を見る』『ぼくは青くて透明で』『夜に星を放つ』など、心に沁み入る作品を次々書いてきた窪美澄さん。最新作『宙色のハレルヤ』は、さまざまな形の愛と恋を描いた6編を収録した珠玉の恋愛小説集です。
惹かれ合う2人の女性に子供の塾で再会した男女、目の前に突然現れたかつての想い人の面影……。
人を思う気持ちを前に「ふつう」なんてある? 私のこの想いに“名前”をつけるなら?
そんな気持ちを掬いあげてくれる作品に、全国の書店員さんから共感の声がたくさん届いています。(第3回/全5回)
TSUTAYA BOOKSTORE APIT京都四条店 岡野真依さん
「普通」とは、「正しさ」とは。
みんなが誰かを愛し、愛され過ごしていく日々。嬉しいことも悲しいことも経験しながら人生はできていく。その中で誰かを好きなれるって怖くもあり凄く幸せなことなのだと感じさせられた。
短編集それぞれの最後一節の表現がとても素敵。
私も過去の一つ一つの大切な思い出をおみやげにして神様にみせたい。
好きな人の中に飛び込む。怖くて勇気がいることだけどそれを出来た自分たちを褒めたい。
一言では表せないけど読むと不思議な感覚になる素敵な物語。
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三洋堂書店新開橋店 山口智子さん
「人を好きになること。その人のなかに飛び込んでいくこと。あんな怖いことをよくやったね自分。」というフレーズにドキっとしました。本当にそう! 心の奥底に押し込めていた遠い記憶の扉の鍵を渡されたみたいな気持ちになりました。
巻き込まれもみくちゃにされた挙句飛ばされて傷だらけになった恋を経験した人たちみんなに「ハレルヤ!」と声をかけたくなる愛おしい恋愛小説集です。
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くまざわ書店西新井店 塩里依子さん
幸せなままで終われなかった恋の傷。心のどこかにこびりついた悲しみも怒りはこれからも変わることなくあり続けるのかもしれない。それでも主人公たちが今の自分に素直になって一歩を踏み出したとき、私の心にも新鮮な風が流れ込んできたような気がした。器用に生きられない自分のままでも、今を思いのままに泣いたり怒ったり恋をしたりして歩いていけばいいんだと背中を押してもらえた。
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くまざわ書店ココロ長岡店 石橋薫さん
作中、「誰かを好きになるってどういうこと? どういう理由でそれは起こるの?」という一文が心に残りました。苦い恋や、温かくこれは愛だなぁと感じた瞬間は誰にでもいくつの人でも心に残る記憶。忘れたように生きていてもふとした瞬間に溢れてくる。この作品はまさにそんな心の奥底に残る名作です。どの章も好きですが、特に、「天鵞絨のパライゾ」と「赤くて冷たいゼリーのように」が心にのこりました。
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興文堂 iCITY店 名和真理子さん
登場人物たちが、痛みを伴いながらも、自分と向き合い、相手と向き合い、本当の自分を受け入れ、自分を自由に解き放ったときの光が眩しかった。
それぞれの思いや葛藤を目の当たりにして、私自身も知らないうちに自分と向き合いながら読んでいた。
自分に嘘をつかず、自分らしく生きるとは。人は一人では生きられない。相手と向き合うことで、自分が見えてくることもある。
自分が何を大切にして生きていきたいのか。
登場人物たちが本当の自分を受け入れて生きていこうとする姿を見ているうちに、私の中でも、ずっと閉じられていた扉が、静かに音を立てて開いた気がした。
きっとハレルヤは扉が開く音だと感じた。
光が差し込んでくるかのようで、そこからいつだって私たちは自由に飛び立てるのだと思う。
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紀伊國屋書店札幌本店 関咲蘭さん
人生というものは人それぞれのたくさんの色で、たくさんの形で咲いていくものだということを教えてくれる作品でした。
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明文堂書店金沢野々市店 瀬利典子さん
そっと触れた、確かにある感情がとても愛しく感じられた。「風は西から」が一番、心に残りました。心と体がくたくたになったとき、今はそれでいいんだと、静かにゆっくりと向きあう、自分でありたいと思いました。