『じっと手を見る』『ぼくは青くて透明で』『夜に星を放つ』など、心に沁み入る作品を次々書いてきた窪美澄さん。最新作『宙色のハレルヤ』は、さまざまな形の愛と恋を描いた6編を収録した珠玉の恋愛小説集です。
惹かれ合う2人の女性に子供の塾で再会した男女、目の前に突然現れたかつての想い人の面影……。
人を思う気持ちを前に「ふつう」なんてある? 私のこの想いに“名前”をつけるなら?
そんな気持ちを掬いあげてくれる作品に、全国の書店員さんから共感の声がたくさん届いています。(第4回/全5回)
精文館書店中島新町店 久田かおりさん
「好き」という気持ちが双方向でしっかりと結びつくことは、意外と少ないのかもしれない。
多分、いくつもの一方通行の好きが世の中にはたくさん降り積もっている。
同性を好きだという気持ちに蓋をして結婚した後、夫を亡くし一人で住む女性が見つめ直す自分の気持ち、
ストーカーに遭っているという行きつけの店のバイトの子との奇妙な同居生活からのあわい関係、
かつて自分をふった相手と子どもの親という形での再会、いろんな気持ちが行ったり来たり。
うまくいかない思いたちを抱きしめて、それでも明日の笑顔が信じられるお話たち。
傷ついたり、落ち込んだり、泣いたり怒ったり。そんな毎日を繋いで生きている自分に、そっと「大丈夫」と言ってあげたくなる。
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紀伊國屋書店浦和パルコ店 横山三智子さん
どのお話も身近に感じて、自分の事かなと思うくらいだった。中でも『天鵞絨のパライゾ』はラストがじんわりと希望をもてる所が好きです。どうしようもない気持ちを抱えて生きることは辛いけど、支え合える人と出会えたことは幸せなんだと思う。
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文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん
恋愛の楽しさ苦しさ、甘酸っぱさ。
色々な恋があり愛があり、ときめきや後悔がある。
誰かを思う特別な気持ちは、心の栄養なのかも、と感じました。
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くまざわ書店調布店 山下真央さん
恋とか愛とか、心の柔らかい部分を描いた物語。その柔らかい部分が愛によって包み込まれたり、柔らかいからこそ簡単に傷ついたり。
感情の描写が、とても繊細だと感じました。
私が特に好きだと感じたのは、「天鵞絨のパライゾ」です。ユーシェンと主人公の関係性。
恋情があるわけではない。けれど、深くお互いを愛し大切にしているように見えました。それでも彼らは、恋情ではないから自分の人生のために、自分のやりたいことをするために、相手の人生を大切にするからこそ離れる選択をする。恋情だと、近くにいようとしてしまうけれど、近くに居なくともお互い大切に思っているとわかっているからこそなのかな?
と私は思いました。
人を好きになるって自分よがりではないか、相手に迷惑じゃないか、そんなことを考える夜もある。人との関係に悩む夜に読んで欲しいと感じました。
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紀伊國屋書店天王寺ミオ店 西澤しおりさん
日々の暮らしでいっぱいで自分を見失った時、読んでみてほしい。ああ、今弱っていたんだなぁと気づかせてくれる短編集です。思いがけない出会いで揺さぶられる、自分の中の本当の気持ち。誰に認めてもらえなくても、どんな形をしていても、見つけた心を大切に抱えていたいと思えました。
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六本松 蔦屋書店 峯多美子さん
人生のひと時を共に過ごした誰かとの忘れ難い時間をときに劇的に、ときに柔らかく、そして痛ましくでも優しく描いた作品。
短い物語の中に、人の中に渦巻く感情が詰まっている。誰しもこの作品の中に自分自身を見る。どの作品の中にも私がいて、いたたまれないくらい共鳴してしまった。時間が経つにつれ、深く心に染み込む圧巻の短編集。
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紀伊國屋書店ゆめタウン広島店 藤井美樹さん
恋だとか仕事だとか将来だとか。悩みまくってなんだか訳わかんなくなった時。
なんかとんでもない行動をしちゃったり、逆に考え過ぎてなんにも出来なくて後悔した事ありません?
この本に出てくる人々も失ったり気づいたりあっけにとられたり右往左往したりしています。読むにつれ、いつの間にかエールを送りたくなるあったかい短編集でした。皆に幸あれ!!
それにしてもパスピエのあやさんにはやられました。