短編集の新刊刊行やドラマ化、さらにエッセイの連載が始まるなど、活躍にますます目が離せない作家・芦沢央さん。2026年は芦沢央さんの作家デビュー15年を迎える記念イヤーです。

そこで、2026年、2027年に芦沢さんの著作の刊行が予定されている、小学館、新潮社、日本経済新聞出版、文藝春秋が4社合同で、デビュー15年を記念した、プレゼントキャンペーンなどを企画します。
ぜひ芦沢さんの15年目にご注目、そして続報をお待ちください!
<著者・芦沢央さんからのメッセージ>
おかげさまでデビュー15年目に入りました!
2012年にデビューしたときは、ずっと書き続けていくぞ! と熱く決意しましたが、本当に今でも書き続けて作品を発表できているのは、ひとえに読んでくださる読者の皆様のおかげです。
ありがとうございます!!!
ジャンルにこだわらずにその時々で書きたいものを好き勝手に書いてきたので、読者の皆様としては「次にどんなものが出てくるかわからない……」と落ち着かなかったかもしれません。すみません。
でも、そうやっていろいろなことに挑戦させてもらってきたおかげで、小説を書く上での様々な筋力を鍛えてこられました。
思えば、デビューの12年前から小説を書いていて、丸14年間小説家として書き続けているので、人生の半分以上小説を書いているんですよね。なのに全然「小説のことはわかった」とならないし、たぶん一生わからないんだろうなと思います。
小説って、本当に奥が深くておもしろいですね……
これからも一作一作に全力で取り組み、筋力を鍛えながら新しい物語に手を伸ばし続けていきたいと思っています。
今後とも応援のほど、よろしくお願い申し上げます!芦沢 央
<プレゼントキャンペーン>
芦沢央さんのキャラクター「ようちゃん」のぬいぐるみ、また、芦沢さんがイベントなどでファンの方にお渡ししてきたショートストーリーを収録した小冊子のプレゼントキャンペーンを予定しています。
詳細は今後の情報公開をお楽しみに!
<自著解説>
『罪の余白』(角川文庫)

解説:西上心太/2015年映画化
『悪いものが、来ませんように』(角川文庫)

解説:藤田香織
小説家になる前から、絶対にこれだけは書きたいと思っていた物語で、今でもかなり思い入れが強い1冊です。
新人賞受賞の連絡をもらった直後、担当編集者との最初の打ち合わせの際に、「次はこういうものが書きたい」といきなりプレゼンし、デビュー作の刊行前に第一稿を書き上げて約一年間かけて改稿しました。
二人の女性の切実な願いの物語です。
今のところ、私の作品で一番たくさんの方にお読みいただいている作品で、本作で版元からの原稿依頼が一気に増えたことで、命綱が増えたような感覚がありました。
『今だけのあの子』(創元推理文庫)

解説:大矢博子/収録作:届かない招待状、帰らない理由、答えない子ども、願わない少女、正しくない言葉
連作短編集を書くのは今作が初めてで、作品同士をリンクさせていくことでどんどんアイデアが湧いてくるのが楽しかったのを覚えています。その中で現れてきたのは、ライフステージが変わることで一緒に形を変えていく「女の友情」というテーマ。否定的に捉えられがちなテーマですが、私は、たとえ期間限定でも脆くても、その時々でその子がいたからこそ踏ん張れたのならそれで充分じゃないかと思っています。
「これが芦沢作品の中で一番好き」という声をかけてもらうことが最も多い作品なものの、「存在を知らなかった」と言われることも最も多い作品なので、「#この作品を発掘してほしい」というタグをつけてSNSでアピールしてみたところ、いろんな人に発掘してもらえて嬉しかったです。
『いつかの人質』(角川文庫)

解説:瀧井朝世
少女はなぜ二度も誘拐されたのか――誘拐事件を軸にしながら、「夢に食い潰されること」への恐怖を描いた物語でもあります。ヘヴィな長篇ですが、私にとってすごく切実な作品になりました。
今でも覚えているのは、第一稿を書き上げたときに担当編集者から「心理描写を半分に減らしてください。それで話が成立しないのなら筋が足りないということです」と言われたこと。自分の書き癖や足りない部分を思い知らされました。800枚の第一稿が全ボツで、600枚の第二稿も全ボツ……と最終的に2000枚くらい書き直し、「今の自分では制御しきれない物語に手を伸ばすこと」を教えてもらった気がしています。
タイトルは登場人物の中のふたりの人物を想定してつけたものですが、私自身も「いつか」の人質のひとりかもしれません……
『許されようとは思いません』(新潮文庫)

解説:池上冬樹/「このミステリーがすごい! 2017年版」国内編5位、第68回日本推理作家協会賞短編部門候補(表題作)、第38回吉川英治文学新人賞候補/収録作:目撃者はいなかった、ありがとう、ばあば、絵の中の男、姉のように、許されようとは思いません
人が罪を犯してしまう瞬間を描いたミステリ短編集です。
私は、数十枚の中に物語世界がぎゅっと凝縮されている短編が大好きなのですが、連作短編集ならともかく独立した短編集は売れにくいと言われて、なかなか書く機会がありませんでした。何となく「最終的に連作短編集にすることになるのかな......」と思いながら、それでも1本目は繋がりなど気にしなくてもいいかと自由に書いた表題作が日本推理作家協会賞短編部門の候補になり、注目していただけたおかげで、その後も好きに書かせてもらうことができました。張り切って5編それぞれで違う試みをし、当時自分がミステリ短編でやってみたいと思っていたことを詰め込んでいるので、自作の中では最もミステリ度が高い気がします。
『雨利終活写真館』(小学館文庫)

着想のきっかけは、ある遺影専門の写真家さんが「その人らしい写真を撮るためにカウンセリングをしている」とおっしゃっているのをドキュメンタリー番組で観たことでした。当時お仕事モノのミステリが流行っていて、挑戦してみてほしいという依頼があったこともありますが、私自身、必然的に「死」に向き合わざるをえない場所で生まれる謎に興味があったため書いた連作短編集です。
当時の感覚や筆力で書いた作品で、文庫化の際には大幅に改稿しましたが、「突然の死によって残ってしまったわだかまりとどう向き合うか」という当初のテーマの根幹は変わっておらず、ミステリとしての結構も残っています。
『貘の耳たぶ』(幻冬舎文庫)

解説:新井見枝香/第6回新井賞受賞
新生児の取り違え事件を書いた長篇です。病院側のミスではなく、母親自身が自ら子どもを入れ替えてしまいます……
彼女は、なぜ子どもを入れ替えてしまったことを言い出せず、4年間も別の子を育て続けたのか。ある日突然、それまで育ててきた子を手放す決断を迫られたもう一人の母親はどんな決断をし、その先に何を見るのか。
母親たちを追い詰め、分断するものについて考えたくて書きました。とてもしんどい物語ではありますが、言い出せない理由が変化していく様、そして「あなたなんて、母親じゃない」という悲痛な叫びの響きの意味が変わる瞬間を見守っていただけたら嬉しいです。
『バック・ステージ』(角川文庫)

解説:成井豊/収録作:息子の親友、始まるまで、あと五分、舞台裏の覚悟、千賀稚子にはかなわない
ある舞台の周辺で起きた出来事、様々な人たちの「謎」を描いた連作短編集です。息子の嘘、好きな人の不自然な行動、公演直前に届いた脅迫状、パワハラ上司との対決など、とにかくいろんなことが起こります。
実は短編執筆時には「同じ日に同じ街で起こる出来事」という縛りしか考えていなかったのですが、単行本にする際に書き下ろしで序幕、幕間、終幕を書いたら、彼らが全編に絡んできて思いもよらない話になりました。単行本刊行時にカバー裏にあった後日談的な掌編は、文庫では「カーテン・コール」として収録されています。
私の作品にしては読後感が悪くないので、重い話や暗い話が苦手な方にも安心してお読みいただけるはず。
『火のないところに煙は』(新潮文庫)

解説:千街晶之/第7回静岡書店大賞受賞、本屋大賞2019ノミネート、第32回山本周五郎賞候補/収録作:染み、お祓いを頼む女、妄言、助けてって言ったのに、誰かの怪異、禁忌
神楽坂を舞台にした実話怪談風ミステリで、「芦沢央」の元に舞い込んできた数々の怪異について書いています。実在のツイートが作中に登場したり、本作の書評を書いた登場人物の著者ページが新潮社のサイトにあったりするので、「これ、どこまで本当の話なの......?」とたくさんの方に訊かれました。さて、どこまで本当でしょうか。
編集者、印刷所の方、書店員さんに「この本に関わりたくない!」と言われた一冊で、私自身もう関わりたくないと思っていたのですが、なぜか続編を書くことになってしまいました……
『カインは言わなかった』(文春文庫)

狂おしいほど認められたくて、もはやかなり狂っているんじゃないかという人が何人も出てきます。それでも狂えないことに劣等感を抱いている人も。
本作を書くのは本当にしんどくて、書き上がってからもしばらくはこの世界から抜け出せませんでした。今も抜け出せているのかわかりません。
才能とは何か、表現のために誰かを何かを踏みにじることの是非について、何度も自分に問いかけながら書きました。刊行後、読み返すのが怖くてまったく読まずにいたのですが、文庫化のために読んだら、3年前の自分が必死に何かを手繰り寄せようとしているのを感じて、また怖くなりました。
書いた頃も今も、私にとって特別な1冊です。
『僕の神さま』(角川文庫)

解説:吉田伸子/収録作:春の作り方、夏の「自由」研究、作戦会議は秋の秘密、冬に真実は伝えない、春休みの答え合わせ
ホームズと出会ってしまったワトソンが、ホームズを盲信するようになっていく一年間を描いた連作短編集です。
小学校が舞台なので、ほんわかした謎もありますが、書いているうちに自分たちで生きる場所を選べない子どもの切実な声が浮かんできて、自分でも予想していなかったラストへと繋がっていきました。
小学生が主人公だからか、何度か中学入試の問題に使われたのですが、送られてきた問題が上手く解けませんでした……
『汚れた手をそこで拭かない』(文春文庫)

解説:彩瀬まる/第164回直木三十五賞候補、第42回吉川英治文学新人賞候補、「ただ、運が悪かっただけ」が第71回日本推理作家協会賞短編部門候補、「埋め合わせ」が第72回同賞候補/収録作:ただ、運が悪かっただけ、埋め合わせ、忘却、お蔵入り、ミモザ
登場するのは、宝くじの高額当選者、仕事のミスを誤魔化そうとする男、隣人の死に責任を感じる人、映画を撮り終えた直後に主演俳優の薬物使用を知った監督、元恋人からの脅迫を受ける女。様々な日常が崩れていく話が詰まったミステリ短編集です。
イヤミスと言われれば否定はできないのですが、私としては嫌な話を書いてやろうと思ったわけではなく、自分自身が怖いものを見つめていったらこんな話になりました。自分を肯定したい、怒られたくない、損をしたくない、過去の呪縛から解き放たれたい――描かれるのはそうした欲望が引き起こす、どれも個人的な出来事です。ちなみに、裏テーマは「お金」です。
『神の悪手』(新潮文庫)

解説:斜線堂有紀/第34回将棋ペンクラブ大賞文芸部門優秀賞受賞、第1回ほんタメ文学賞たくみ部門大賞受賞/収録作:弱い者、神の悪手、ミイラ、盤上の糸、恩返し
将棋に関心を持ったのは、26歳の年齢制限までに四段に昇段できなければプロになる道が断たれる「奨励会」という場所に恐怖を覚えたからでした。
夢に追われること、誰かと繋がること、一生を懸けても手が届かないものにそれでも手を伸ばし続けること――将棋に触れていく中で浮かび上がってきたアイデアを、思うままに書かせてもらったミステリ短編集です(実は〆切を設定されていないのに勝手に書いたのは、デビュー以来初めてかもしれません)。
本書がきっかけで、名人戦や竜王戦の観戦記を担当させてもらえたことが『おまえレベルの話はしてない』の執筆に繋がっています。
『夜の道標』(中公文庫)

解説:山田詠美/第76回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門受賞/2025年WOWOWで連続ドラマ化(「夜の道標 -ある容疑者を巡る記録-」
日々倫理観がアップデートされ、数年前には「そういうもの」とされてきたことが断罪されるようになっている中で、長い時間残る本を発表することに恐怖を覚えるようになってきました。誰に断罪されることがなくとも、自分自身がかつて自分が書いた物語を許せなくなる日が来るかもしれない。そんなことを考える中でどうしても書かずにいられなかった物語です。
日本推理作家協会賞を受賞し、ドラマ化もされ、とても幸せな作品になりました。ドラマ版では事件当日に何があったのかも映像として表現してもらったので(小説の方では最終的に削ったシーンをお見せしました)、よかったら合わせてご覧いただけたら幸いです。
なお、『嘘と隣人』の主人公、平良正太郎が現役刑事として登場します。
『魂婚心中』(早川書房)

第6回島田賞短編小説部門受賞/収録作:魂婚心中、ゲーマーのGlitch、二十五万分の一、閻魔帳SEO、この世界には間違いが七つある、九月某日の誓い
推しとファン、ライバル、先輩と後輩、上司と部下、◯◯◯◯と世界、主従――様々な関係性の中で生まれる強烈な感情を描いた短編集。
SFを目指して書いたものも、特殊設定ミステリのつもりで書いたものもありますが、全編において特別な世界観ならではのホワイダニットを意識しました。
私の作品の中では変わり種ですが、その分動機の飛距離も大きいはずなので、現実と異なる世界観も楽しめる方、異常な動機が好きな方には面白がっていただけるのではないかと。
私自身は、これらの作品が書けたことで、書ける物語の幅がぐっと広がった実感があります。
『嘘と隣人』(文藝春秋)

第173回直木三十五賞候補/収録作:かくれんぼ、アイランドキッチン、祭り、最善、嘘と隣人
『夜の道標』に登場する刑事、平良正太郎の定年退職後を描いた連作短編集です。
マイホームを買ってのんびり家庭菜園を……と考えていた正太郎が様々な事件に巻き込まれていきます。引退して捜査権限がなくなり、調べること、謎を解くことが仕事ではなくなった彼は、事件にどう向き合っていくのか――
意識的に短編の書き方を変えた作品で、個人的には「あえて真相に寄与しないシーンも書くこと」「ひとつの話に短編ふたつ分のアイデアを入れること」というマイルールを設けて書いていました。
日常は歪に壊れていくし、それでも人生は続いていく……というわけで、続いていく正太郎の人生を追って、現在続編を執筆中です。
『おまえレベルの話はしてない』(河出書房新社)

物語の筋を決めず、伏線を考えずに物語と一緒に歩んでいくような小説観ではどんな光景が見えるのかが気になって挑戦した作品です。
シーンをイメージした短歌を作ってから、それを捨てて小説を書くというのを繰り返して物語を探っていきました。そうして書いた章と、いつもの書き方で書いた章で構成されています。ひとつの物語を視点ごとにまったく異なる小説の書き方で書いたら、その文体の違い自体が、それぞれの登場人物の時間感覚、世界の見方、距離感を表現してくれるのではないかと考えました。
内容としては、同じ夢を追っていたものの道が分かれたふたりが、互いへの羨望と侮蔑をこじらせていく青春小説ですが、私の小説なんで爽やかさとは無縁です。
『あなたが正しくいられたとき』(文藝春秋)

収録作:あなたが正しくいられたとき、代償、薄着の女、立体パズル、待てば無料、投了図
2017年から2026年までの間に発表してきた読切短編を収録した短編集で、私の関心やこだわりの変遷がよくわかる1冊になっているのではないかと思います。
「投了図」は『神の悪手』が、「立体パズル」は『夜の道標』がきっかけで書いた作品なので、あーこの時期にこれを書いていたのかーと楽しんでいただくのもアリかもしれません。
昔書いたものは技術的な拙さが目立ったためかなり書き直しましたが、私自身、久しぶりに自作を読んで今の自分なら思いつかないような動機や展開にびっくりしました。変なこと考えるなあ、この人。
やっぱりアイデアは出し惜しみせず、その時々で使い切っていくのが大事ですね。













