悲しみは時が癒してくれる、というのは嘘である。これは愛するひとを喪って初めて突きつけられる真実の一つだ。
本書は、二〇〇二年から二〇二一年のあいだに月刊「文藝春秋」に掲載された、愛するひとを喪ったひとびとの魂の記録である。寄稿、インタビュー、対談と、形は異なれど、かけがえのない家族、そしてその最期の時間が綴られている。
母、父、妻、夫──一つとして同じものはない家族との別れを、それぞれの立場の視点から編んだ。
別れまでに濃密な時間を過ごす場合もあれば、受け入れがたいほどあっけないものもある。亡くなって間もない中に書かれ、心の揺れや息遣いすらも感じ取れる寄稿もあれば、没後ひと呼吸を置いたからこそ悲しみが血肉化した味わいあるインタビューもある。
本書を貫くのは、喪失感に打ちひしがれているときに「語らう」ことの大切さだ。大切なひとを喪った者同士であっても同じ悲しみは一つとしてないが、柳田邦男氏はそれでも、友人、地域の人々との語らいがグリーフ(悲嘆)ケアになると語る。そして死者が心に甦るとき、新たな人生を考えられるようになると書く。
本書を通して、読者の一人ひとりが心のうちにある語るべき言葉に気づく一助となることを願ってやまない。
編集部
「はじめに」より






