2014年11月28日、都内中央区の八重洲ブックセンター本店で、トーク&サイン会「『ハゲタカ』から10年 『売国』――真山仁 新たなる挑戦 」が開催されました。詰めかけた100人のファンを前に、『売国』執筆の舞台裏や、作家生活10年間の変化、今後の構想など約1時間にわたる熱意溢れるトークが繰り広げられました。
『ハゲタカ』の真山仁から『売国』の真山仁へ
真山仁としてデビューして10年になります。「嘘でしょう、まだ10年なんですか?」などと言われるんですが、自分では、ようやく10年だと思っています。
10年前、2004年の12月に『ハゲタカ』(ダイヤモンド社/講談社文庫)を出して、小説家の仲間入りをさせていただきました。3年後にNHKでテレビ化されたときは文庫が出ていましたが、単行本の表紙には白頭鷲(はくとうわし)が描かれていました。この鳥はいわゆるアメリカの象徴なんですが、知り合いからは「鳥が嫌いだから買わない」と言われたり、「鳥類図鑑か?」なんて聞かれることもあるくらいでした(笑)。
ハゲタカという名前の鳥は存在しません。ハゲタカ・ファンドという当時のビジネスを象徴した言葉で、1990年代後半から今世紀の初頭にかけて起こったものです。
『ハゲタカ』の1年前に共著の別のペンネームで『連鎖破綻~ダブルギアリング』(角川文庫から2014年12月復刊)を出しました。好評だったら単独でデビューしていいというお話がダイヤモンド社からあり、『ハゲタカ』の出版にこぎつけました。
さて、『ハゲタカ』の話に戻しますが、金融、そして外資を扱っていますが、登場人物はすべて悪い奴にしようと決めていました。
というのも、『ダブルギアリング』はすごく悲惨な話なのに、いい人しか出てこないというご指摘があったからです。「悪い人が書けないなら小説家じゃないよ」とまで言われました。おもしろいもので、悪い人を書いていると、小説が人間くさくなるんですよね。
出版から3年後にNHKでドラマ化されて、私にとってさらに大切な作品になりました。その一方で、他ジャンルの作品を発表しても必ず「『ハゲタカ』の真山仁が」という形容詞がつくようになりました。今は、それを凌ぐ作品を目指しています。
2013年10月に「ハゲタカ」シリーズ4作目となる『グリード』(講談社)を出した時に、ここ八重洲ブックセンターの内田俊明さんに、「今、週刊文春に連載している『売国』って何ですか? 今までと全然違いますね。トークショーはうちでお願いします!」って言っていただいて。連載中にトークショーが決まったのは初めてです。10年書いているうちに私のなかで変化があって、ずっと私の作品を見てくださっている書店員さんは、それを感じられたんだと思います。
Amazonのレビューを見ると、「これが『ハゲタカ』を書いた著者か」という批判もありますが、私にとっては『ハゲタカ』がライバルなんです。『ハゲタカ』がいいと思ってくださっている方に『売国』を押しつけようとはしませんが、今まで積み上げてきたものが反映出来た作品だという自負はあります。
今日から皆さんが「『売国』の真山」と周りに言ってくださって(笑)、いつか「『売国』の真山」と言われるようになりたいですね。常に次はもっと良い作品にするという気持ちで取り組んでいくことが大事だと思っています。
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