10年の執筆活動で変わったこと、変わらなかったこと
『ハゲタカ』から『売国』までの10年間で、変わらないことと、変わったことが明らかにあります。
変わった部分は1作品のページ数が減りました。
小説の怖さも面白さもようやくわかってきて気がついたのですが、小説って書き過ぎないというのは重要なんです。その方が、想像力が高まっていく。もしデビューした頃に『売国』を書いたら、上中下巻になっていたと思います。
その一方で変わらなかったことは、青臭い正義感を持つことでしょうか。言い訳をしない、逃げないといったことを常に考えて小説を書いています。
2014年3月に出した『そして、星の輝く夜がくる』(講談社)は、被災地を経験した小学校の先生と子ども達の話です。その次に、10月には『売国』で地検特捜部と宇宙開発をテーマにしました。2つは全く異なるタイプの小説ですが、私の、言いたいことは変わっていないんです。このスタイルはこれからも変わらないと思います。
一喜一憂しないようにもなりました。Amazonのレビューを見ても自分で吸収出来る。今までは、本が売れないと書店や出版社のせいにしていたんですが、私の責任だと思えるようになりました(笑)。読者が喜ぶ内容や書き方を優先して書くことはこれまでもこれからもしません。私も人間ですからもちろん売れて欲しいですが(笑)、自分の中で伝えたいことをしっかりお伝えすることが信条ですので。
デビュー10周年ということで、「お祭しましょうよ」と編集者の方々に言っていただいて、なんと9つの出版社が連携してくださることになりました。他社の本でも関係なく、真山仁の作品を応援するという普段ならあり得ない、新しい試みです。
1年間の間に9社で連載したり単行本や文庫本を出す予定ですが、「10」と書かれたロゴまでつくっていただき、文藝春秋から出た『売国』に、次に角川文庫から出る新刊『ダブルギアリング』のチラシが入り、さらにその中には幻冬舎から出る予定の書き下ろし小説の予告が入る、といった具合です。電子書籍でも、次に出る作品の予告編を10ページ分くらい入れていただくという、異例の告知をしていただきます。
いかに私が尽して来たかということではなくて(笑)、皆さんがおもしろそうと感じてくださって、実現したことです。
2015年1月29日発売の『雨に泣いてる』(幻冬舎)は、初めての一人称小説、ハードボイルド作品です。「ハードボイルドを書く作家は、なぜ尊敬されるんだろう」と思っていましたが、理由が分りました。とにかく書くのが難しい。
1年で単行本などを5作品以上書くということは、5年分の仕事をしなくてはなりません。内容や締め切りがバッティングするんじゃないかと心配もありますが、本当に幸せなこと。意気に感じて頑張っていこうと思います。
これからの10年は、可能性があるものはすべてやっていきたいですね。『売国』の登場人物の特捜部検事の冨永真一シリーズをやりたいという、壮大なプランもあります。昭和史をテーマにした本も書いてみたい。やったことのないことをやることが、書いている側も読んでいる側もおもしろいと思っています。
出版社や読者が「真山はいらない」となるまでは、しがみついて一生懸命にやっていきたいと思っていますので、これからも応援してください。今日はありがとうございました。
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