「モダン・ホラーの帝王」として半世紀以上にわたって君臨するスティーヴン・キング。『ミザリー』『シャイニング』『ペット・セマタリー』と往年の名作タイトルをすぐに思い浮かべる人は多いことでしょう。しかしアメリカはじめ世界中の読者を惹きつけてやまないキングの魅力は、ただホラーのみにあらず。かけがえのない人生の悲喜こもごもを謳う叙情性に満ちた「泣ける」ストーリーも、キングのもう一つの魅力です。

そこで、“エモい方のキング”の中編2作を収録した新刊『チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ』の発売を祝して、歴代の担当編集者がゲラを手に泣いてきた文藝春秋のスティーヴン・キングのエモい傑作たちをずらりとご紹介。

「リアル寄り」「ファンタジー寄り」の2つのポイントで分けて、一挙11点をご案内します。ぴりっと怖い一面を織り交ぜながら、怒涛の感動へとつなげていくスティーヴン・キングの世界。次に読むためのご参考にどうぞ!

デビュー50周年記念! スティーヴン・キングを50倍愉しむ本(2023 無料電子書籍)に最新刊を入れてアップデート。四象限マトリックスを利用した作品紹介はこちらでお楽しみください。


リアル寄りのエモ

〈リアル×エモさ〉のカテゴリージャンルは、キングの得意技。青春の喪失をリリカルに描く名品たち。少年少女を書かせてキングの右に出る作家は何人いることでしょう。

『コロラド・キッド』 (非売品2005年→2024年)

『コロラド・キッド』

※『コロラド・キッド 他二篇』に収録。
長らく日本で入手困難だった表題作もさることながら、日を追うごとに体重が軽くなってゆく(!)中年男が活躍する「浮かびゆく男」が感動作。田舎町の不和をひとりのおじさんが華麗に解決してみせます。さらにもう一編、こちらもレア本になっていた直球ホラーを収録!

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『ビリー・サマーズ』 (邦訳2024年)

『ビリー・サマーズ』

日本推理作家協会賞翻訳部門受賞作! 引退を決意した殺し屋ビリーは最後の仕事のため、小説家の偽装で潜伏する。緊迫の犯罪小説に、主人公が書く自伝を作中作で織り込み、物語を書くこと・読むことの尊さを謳いあげる傑作。クライマックスの景色の美しさも必見。

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『死者は嘘をつかない』(邦訳2024年)

『死者は嘘をつかない』

少年には死者と会話する能力があった。母を助けるために使った他は能力を秘密にしていた彼だったが、ひょんなことからそれを知った刑事が、能力を利用しようと近づいてきた……少年の冒険を書かせれば随一の著者が、ホラーとサスペンスを見事に融合してみせた逸品。

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『ファインダーズ・キーパーズ』(邦訳2017年)

『ファインダーズ・キーパーズ』

土中から札束を発見した少年は、大金を家族のために使おうと決めた。しかしそれを埋めた強盗犯が刑務所から出所してきて──退職刑事ホッジズ第二作だが、主役は家族思いの少年ピート。強盗から家族を守ろうとする奮闘が泣かせる。第一作『ミスター・メルセデス』よりもエモさを増した快作。

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『ジョイランド』(邦訳2016年)

『ジョイランド』

僕は小さな遊園地ジョイランドで夏のバイトを始めた。ここの幽霊屋敷には怪談があったが、これは実際にいまも起きている連続殺人の一つではないかと僕は気づいた……。今回の主人公は大学生。失恋、夏のバイト、仲間や先輩との交流、初めての大人っぽい恋愛、といったエモい要素がてんこ盛り。

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『異能機関』(邦訳2023年)

『異能機関』

久々の超能力もの。近年のキングはキャリアの初期に着想したアイデアの作品化(『アンダー・ザ・ドーム』『11/22/63』)をはじめ、古きよき時代への回帰が見られるが、この新作もそのひとつ。とくに『ファイアスターター』のファンにはたまらないのではないか。

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ファンタジー寄りのエモ

〈幻想×エモさ〉は、幻想小説作家としてのキング。『指輪物語』を愛し、「いま一番書きたい物語」としてファンタジー『フェアリー・テイル』を書き上げたキングは筋金入りの幻視者なのです。

『11/22/63』(邦訳2013年)

『11/22/63』

その食堂の奥には1958年に通じるタイムトンネルがあった。それをくぐり、ケネディ暗殺を阻止する──孤独に暮らす僕は食堂の主人の遺志を継ごうと決めた。だが僕は過去の世界で、ある女性に出会ってしまう……。キング史上最強の涙腺破壊小説。SF的仕掛けも読ませるし、サスペンスも強烈だが、何より恋人と世界の運命を天秤にかける大恋愛! エピローグで回収される伏線も感涙必至。質量ともに圧倒的なキングのエモ系の最高傑作であろう。

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『ドクター・スリープ』(邦訳2015年)

『ドクター・スリープ』

名作『シャイニング』の続編。少年ダニーが中年男になって再登場、自分と同じような能力を持つ少女とともに、人の精気を吸血鬼のように吸い取って殺す集団に立ち向かう。恐怖に焦点を絞った前作から一転、異能バトルのようなファンタジー活劇に仕上げられている。なお映画版は『シャイニング』小説版と映画版を和解させるような脚色がなされていてファン必見。

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『リーシーの物語』(邦訳2008年)

『リーシーの物語』

作家だった夫を亡くしたリーシーを見舞うさまざまな怪異。夫との思い出を回想しながら、彼女は、怪異の源泉である夫の暗い過去を探ってゆく。キングの「文芸作品の時代」の最後を飾る大作で、キング曰く最愛の作品。記憶と言葉、現実の暴力と過去のトラウマ、この世と異世界。これらを複雑に縫いあわせ、キングは愛する者の喪失と向き合うというテーマを丹念に描いてゆく。とくに悪夢めいた異世界の光景には独特の美しさが宿っていて忘れがたい。

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『フェアリー・テイル』(邦訳2025年)

『フェアリー・テイル』

少年は愛犬を救うために異世界での冒険の旅へ! コロナ禍の日々、「自分が一番書きたい小説を書こう」と決めたキングが放った大冒険ファンタジー。異様な怪物や蠢く街路など、キングらしい怪奇も満載の旅の果てに待つのは、もちろんお待ちかねのハッピーエンドだ。

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『チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ』(邦訳2026年)

『チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ』

あちこちに出現した「ありがとう、チャック!」の看板の正体は? 時をさかのぼる3幕構成で人生のかけがえのなさを語る“エモいキング”の真骨頂の表題作と、少年と老人の絆を描く「ハリガンさんの電話」。前者の映画化「サンキュー、チャック」は26年GW公開!

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