日本初の「SHUNGA春画展」が開催、メディアでも大きく取り上げられるなど、春画が一大ブームを巻き起こしています。そこで、女性の就活、婚活相談を多数引き受けてきた川崎貴子さん、アダルトビデオ(AV)業界で男優、監督として活躍している二村ヒトシさんという、現代の男女事情に詳しいおふたりに、春画から見た江戸時代を現代と比較し、男女のありようを縦横無尽に論じていただきました。
川崎貴子(かわさき・たかこ)
1972年生まれ。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性誌での連載、執筆、講演多数。著書に『上司の頭はまる見え。』(サンマーク出版)、『愛は技術』(ベストセラーズ)。最新刊は『私たちが仕事を辞めてはいけない57の理由』(大和書房)。ふたりの娘を持つワーキングマザーでもある。
二村ヒトシ(にむら・ひとし)
1964年、六本木生まれ。幼稚舎から慶應義塾で育ち、慶應義塾大学文学部中退。アダルトビデオ監督。女性側の欲望・男性の性感・同性愛や異性装をテーマに革新的な作品を発売。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)、共著に『オトコのカラダはキモチいい』(KADOKAWA)、対談集『淑女のはらわた』(洋泉社)。
男性と女性が逆転する世の中の方が生きやすい
川崎 ところで、さっきの女装したAVの話ですが、ゲイじゃないのにちゃんと結合できるんですか?
二村 もちろん結合しますよ。
川崎 へ~、すごい。
二村 その前に2時間くらいかけてお尻の穴を広げますけどね。
川崎 たいへんですね、そこから仕込むんだ……。
二村 たいへんですよ。当時は陰間が一つの文化として確立されていましたよね。女性が少なかったから、きれいな男の子がこういう仕事をやらざるをえなかったのかもしれないけど、みんな楽しくやってたんだと思うんだよね。
今の時代だって、これからはそういう時代だと思いますよ。
川崎 そうですか。
二村 僕は、生まれつきの生物学的な性別に一生縛られるんじゃなくて、男性と女性がその時々で逆転する世の中のほうが生きやすいだろうと思うんです。
たとえば、愛される方、相手の欲望を喚起させる受け身モードを取ると決めた人は男性でも女になればいいし、女性だって受け身の相手のおちんちんを勃たせようと積極的なモードになったほうが楽しければ、そうすればいいんです。
川崎 たしかに。そんなふうに、男や女に自由になれるスイッチがあると、生きるのはすごく楽になります。
二村 今は男女の役割が勝手に決められちゃってるじゃないですか、男は勃たなければ男としてダメだとか、女は男を興奮させなければならないとか。それがまた面倒くさいよね。極論を言えば、男は勃たなきゃいけないということすら幻想だと思っている。お互い仲良く気持ちよくなれれば、そんなこと、どうでもいいんだよね。
それが面倒なことになっているのは、春画を含めてポルノが悪い。おちんちんをデフォルメしすぎて描いて、勃ってないと男はダメだと観る側に思わせてしまうからね(笑)。こういう強迫観念みたいなものは、春画の時代から始まっていたのかもしれないけど、女性と愛し合うためには、別に勃ってないといけないということはなくて、役割はその時々で性別に関わらず自分で選んでいいと思うんです。だから僕は性別含め、固定観念にとらわれないAVを、信念をもって作っているんです。
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