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『あさきゆめみし』から『寄生獣』まで。知恵と知識が「学べる」マンガはこれだ!

『あさきゆめみし』から『寄生獣』まで。知恵と知識が「学べる」マンガはこれだ!

文:里中 満智子 (マンガ家/マンガジャパン代表)

『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』 (佐渡島庸平、里中満智子ほか 著)


ジャンル : #ノンフィクション

里中満智子先生おすすめ その(2)
生命とは何かを問うた傑作『寄生獣』

『寄生獣』(岩明 均 著)

 ある日、高校生のシンイチの右手に、宇宙から降ってきた謎の生命体「寄生獣」が入り込みます。目玉を持ち、変幻自在にかたちをかえるそれをミギーと名付けたシンイチ。奇妙な共生関係がはじまります。

 そんななか、寄生獣の仲間たちが、次々と人間を襲いはじめます。寄生獣の使命とは、人間という種を食い尽くす、というものだったのです。

 夫のかたちをした寄生獣が、妻の頭をまるごとガブリと食いちぎったり、と画面が恐ろしいです。スパッと鋭利にまっぷたつにされるシーンも登場します。そして、やられた方は、何が起きているかすら分からない。

 寄生獣は、なぜ人間を襲うのか。そこには、人間がいなくなったら、環境問題も解決されるし、地球上のほかの生命が暮らしやすくなるのではないか、という問いかけもあります。

 右手だけミギーに乗っ取られた主人公は、悩みます。自分とは何なのか? かたちとは何か? 生命とは何か?

 われわれは、目、耳、触覚で他者を認識している。それがすべて崩れたときの恐怖心とは、どのようなものなのでしょう。そして、もし自分がそんな状況になったとき、人間はエゴイスティックにもなりえます。あっち側(寄生獣)になってしまって、早く楽になりたいと思うかも知れません。そのとき、あなたはどうするでしょうか。

 とはいえ、不信感だけでは生きていくことはできません。私たちは毎日、意識しなくても、自分と他者の関係について、確認作業を行っているわけです。

 このように、残酷マンガに見えて、じつは哲学的な命題をふくんだ傑作となっています。

里中満智子(さとなかまちこ)

里中満智子

マンガ家/マンガジャパン代表
1948年1月24日大阪生まれ。1964年(高校2年生)に『ピアの肖像』で第1回講談社新人漫画賞受賞。代表作に『あした輝く』『アリエスの乙女たち』『海のオーロラ』『あすなろ坂』『狩人の星座』『天上の虹』など多数。2006年に全作品及び文化活動に対し文部科学大臣賞、2010年文化庁長官表彰、『マンガ古典文学 古事記』で2013年度古事記出版大賞太安万侶賞、2014年外務大臣表彰。公益社団法人日本漫画家協会常務理事。一般社団法人マンガジャパン代表。NPOアジアマンガサミット運営本部代表。デジタルマンガ協会会長。大阪芸術大学キャラクター造形学科学科長など。

人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊
佐渡島庸平、里中満智子 ほか・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2016年06月29日

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