- 2016.06.29
- 書評
『あさきゆめみし』から『寄生獣』まで。知恵と知識が「学べる」マンガはこれだ!
文:里中 満智子 (マンガ家/マンガジャパン代表)
『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』 (佐渡島庸平、里中満智子ほか 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
里中満智子先生おすすめ その(2)
生命とは何かを問うた傑作『寄生獣』
ある日、高校生のシンイチの右手に、宇宙から降ってきた謎の生命体「寄生獣」が入り込みます。目玉を持ち、変幻自在にかたちをかえるそれをミギーと名付けたシンイチ。奇妙な共生関係がはじまります。
そんななか、寄生獣の仲間たちが、次々と人間を襲いはじめます。寄生獣の使命とは、人間という種を食い尽くす、というものだったのです。
夫のかたちをした寄生獣が、妻の頭をまるごとガブリと食いちぎったり、と画面が恐ろしいです。スパッと鋭利にまっぷたつにされるシーンも登場します。そして、やられた方は、何が起きているかすら分からない。
寄生獣は、なぜ人間を襲うのか。そこには、人間がいなくなったら、環境問題も解決されるし、地球上のほかの生命が暮らしやすくなるのではないか、という問いかけもあります。
右手だけミギーに乗っ取られた主人公は、悩みます。自分とは何なのか? かたちとは何か? 生命とは何か?
われわれは、目、耳、触覚で他者を認識している。それがすべて崩れたときの恐怖心とは、どのようなものなのでしょう。そして、もし自分がそんな状況になったとき、人間はエゴイスティックにもなりえます。あっち側(寄生獣)になってしまって、早く楽になりたいと思うかも知れません。そのとき、あなたはどうするでしょうか。
とはいえ、不信感だけでは生きていくことはできません。私たちは毎日、意識しなくても、自分と他者の関係について、確認作業を行っているわけです。
このように、残酷マンガに見えて、じつは哲学的な命題をふくんだ傑作となっています。
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