
限りなくアウトサイダー

光浦 今日、ちょうど対談が載る号の表紙のオブジェ持ってきた。
西 すごい、これ!
光浦 西さんはいいね。褒めてくれるんでやる気になるよ。
西 いや、すごいよ! かわいい! 普通のかわいいっていう感覚ともちゃうよな。
光浦 ちょっと狂ってるよね。
西 うん、狂ってる、狂ってる。ほんまちょっとアーティストのね。
光浦 座標が、売れるやつではないよね。
西 夏やからアイスと思ったん?
光浦 そう。
西 そんで舐めさせようと思ったん?
光浦 そう。
西 この発想がないよね。すごい。マジですごい。天才やと思うで。
光浦 うれしいな。でも「こんばんは、森進一です」っていうモノマネ方式だよ。前号だとカエル作って「FROG」ってつけ、夏がテーマだから「サマー」ってつける。一番モノマネ界でやっちゃいかんっていう方式をやってるもんで。
西 先に答えを言うやつ(笑)。
光浦 そう。だから、いつか誰かがつっこんでくれないかなと思って。
西 なんでこれをしようって思うの? 例えばカエルとか、夏だアイスだ舐めようって、そのセンスってどこから来てると思う?
光浦 分からんけど、もし決めるなら動物を決めるだけだな。
西 キリン、とか?
光浦 そうそうお題が。別冊は季節が限定されてるもんで、お題が夏なら「夏? 初夏?」って言ってると動物が一個決まって、そこからはとにかく動物を作り出す。
西 色味とかあるやん。例えば補色を使ったり、普通の人が使わない色味を使ったりするじゃない? それってどこから来てる?
光浦 それは分からない。
西 お洋服とかも普段からすごいかわいいやん。
光浦 でも、派手な服は着ないもん。
西 それってお母さまからの影響?
光浦 芸術の才能はどっちもあんまりないな。でも、お父さんは多少絵を描くけど。
西 あ、そうなんや。
光浦 全然、絵描きとかじゃないよ。
西 趣味で絵を描かれる感じ?
光浦 うん。お母さんは何もしない。私、美術も全然駄目で、駄目なお手本で出されたし。
西 えっ、マジで?
光浦 ずっとセンスないって、絵下手だって言われてた。
西 メチャメチャかわいいのに!
光浦 これは夢ですね。
西 夢?

光浦 私、勇気がないし、自分はどこかでセンスがないってずっと思ってたから、ファッションでも何でも、この色にこの色を合わせるとか似合う色、似合わない色があるとか、ずっとやれなかった。だけど、手芸の、こんな小さなものに対してセンスが悪いだなんだガタガタ言われる筋合いはないじゃん。だから、ここは自由に自分の好きな色全部足していいって思った。
西 うんうん。
光浦 とにかくきれいな色とか派手な色が好きなんだよね。だから、それをガチャガチャガチャガチャ入れても誰からも怒られないっていうのがうれしくて。キャッキャキャッキャ。
自分が望むものと、向こうから来るものがある
西 独特よね。その色だけでもすごいし。トラにお花合わせる感じとか。その感じって何? ギリギリのところ行くやん。
光浦 気持ち悪いのギリギリ(笑)。
西 そうそう。それで激烈にかわいいところにおれるやん。
光浦 うれしいな。
西 それって何なんやろな。そのセンスって。
光浦 本当に気持ち悪い話だけど、動物がしゃべるんですよ。
西 しゃべる?
光浦 しゃべるんですよ。愛情込めて作ってあげると、動物が。
西 「これにして」とか?
光浦 「青色だな」って(笑)。
西 えー、ほんと?
光浦 イメージカラー。これを言うと気持ち悪いって言われちゃうけど、ほんとメルヘンの世界に住み始めちゃってるもんで。
西 いやいや、メッチャいい話!
光浦 動物作ると、作ってる最中から動物が「俺はこの色だ」っていうイメージカラーを言うわけよ。
西 だからアーティストやねんって、やっぱり。しかも、限りなくアウトサイダー・アートに近い。シュヴァルの理想宮じゃないけど、自分が望むものと、向こうから来るものがあるんやろ?
光浦 あ、そうそう。仏を彫っとる人みたい。
西 素晴らしいね。
別冊文藝春秋 電子版3号
発売日:2015年08月17日
-
『陰陽師 烏天狗ノ巻』夢枕獏・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2023/09/29~2023/10/6 賞品 『陰陽師 烏天狗ノ巻』夢枕獏・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。