特集

ラヴレターはこうして書こう! 著名人の見事な手紙を読み解く

文: 山田 憲和 (文藝春秋)

『ラヴレターズ』 (文藝春秋 編)

各界活躍中の言葉の名手たちが腕を振るってラヴレターに熱い想いをしたためます。 著名人たちの秘めた恋が垣間見える、名文の数々を担当編集者が解説します。

「今日はとっても暖かい日でした。遮光カーテンを開けてみたら、ぽかぽかとお日様がお部屋を照らして、久しぶりにストーブを点けない朝を過ごしました。貴方のお部屋に、同じ光が差していたのかな。それだといいな」

 女優の二階堂ふみさん。いい感じですね。こんな手紙をもらってみたいですよね。まあ、無理ですよね。

 それではラヴレターの書き出しをここに列挙しますよ。

 吉本ばなな「恋愛ってなんだろう? と思うとき、よく『やはり肉体的な要素が強くて、性欲がうんとはいっているものだ』というわけしり顔の意見を聞きます」

 皆川博子「貴方様ではありませんでした」

 高樹のぶ子「ノンちゃんは雲に乗ったことがありますか?」

 橋本治「今の私には、愛したい誰かとか愛されたい誰かがおりません」

 松尾スズキ「片桐さん。片桐はいりさん」

 小池真理子「ゴマちゃん、今、どこにいるの? 天国?」

 横尾忠則「タマでーす」

 なんだかわからなくなったりもしますけど、文章の達人たちには、誰にも真似のできないオリジナルな説得力があるんですよね。凄いものです。

 どうしても書き出しが思いつかない人のためには、絶対的に応用のきく方法もあるんですよ。まあ、必殺技なんですけどね。「時間」を使うのです。

 川上未映子「最後に会ったのはいつだろうと数えてみて、それが二十四年もまえだということを知って驚きました」

 砂田麻美「あなたと距離をおくようになってから、早いもので七年近い歳月が経ちました」

 中江有里「長らくご無沙汰しております。もう会うことはないでしょうが、いくつか伝えておきたいことがあったので、こうして筆をとっています」

 壇蜜「お久しぶりです。会わなくなってもう大分経ちますね。私の姿は時々雑誌やテレビで見ていると思うので元気かどうかなんて野暮な話はしません」

 さらに「時間」の使い方には応用編もあります。

 山本容子「まずは、昨日届いた七枚目の葉書の返事です」

 小島慶子「あなたはいま23歳で、一人暮らしを始めたばかりですね」

 加藤千恵「こんばんは。今は夜で、少し寒くて」

 岩下尚史「あれから、ひさしぶりに、深い眠りに落ちました」

 どうですか。書き出しは、とても重要ですね。奇をてらう必要はありません。「時間」を使ってオーソドックスに書きはじめれば、それなりに相手の心を打つことはできるのです。もしかしたら恋愛の本質というのは、この「時間」にあるのかもしれませんね。

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ラヴレターズ
文藝春秋・編

定価:本体1,350円+税 発売日:2016年02月13日

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