体育会系文芸編集者の美希は、仕事上で謎にぶつかると中野の実家に帰る。コタツにあたりながら娘の話を聞くや、嬉々として謎に挑むのは高校国語教師の父――。 本の達人・北村薫の新作は、親子の会話を楽しむうちに気持ち良く「日常の謎」の解答を得られる「新名探偵シリーズ」! 益田ミリさんが描くポップな表紙が目を引く本作の舞台は、小説や週刊誌、女性誌も擁する大手出版社。登場する編集者たちの徹底したリアリティに貢献した、北村担当編集女子・K、Y、H、Rの4名が語る「中野のお父さん」の魅力と、製作裏話。
R 私は雑誌連載時の担当をさせていただいたので、何度か取材にご一緒しましたが、北村先生は人の話を聞くとき、キラキラした目で「うん、うん、それで?」って、聞き上手なんですよね。
H 取材じゃない時でも、私たちとの雑談で出てきたエピソードをとてもよく覚えていらっしゃいます。何気なくお話ししたことに北村先生がぐっと身を乗り出して「それは、どうしてなんだろう」っておっしゃったり……逆に、こちらが「これは面白い話のはず!」と思ってお話ししても、先生は全く興味をもたれず「ふーん」って流されることも(笑)。まだどこにも結論がない、オチのない話に惹かれていらっしゃるようにも思います。
Y 全然ご興味がないと、ふっと別の話を始めたり……
K スポーツや旅行には全くご興味がありません! 今回の取材のために大学にお連れして、バスケ部の練習を見ていただきましたが……実際に小説に活かされたのは、私がピンクのジャージで試合のベンチに入ったとか、そういうことだけでした(笑)。
R Kさんは連載スタート時の担当で、主人公の体育会系編集者・美希のモデルですね。
K 美希の性格やエピソードに関しては北村先生が作り上げられたものですが、体育会系文芸編集者という条件、背が高いとか、バスケをやっていて大学まで選手だったとかは、私のことですね。本文中に出てくる「作家のサイン会で女性ガードマンに間違えられた」というエピソードも、不本意ながら実際にあったことです(笑)。
H 不本意といえば、美希の同僚・ゆかりさんのデスクの描写が凄いんですけど……「隙間には大きな紙封筒が幾つも刺さり、タケノコよろしく天に伸びている。机の下の、奥や脇では、資料のつまった紙袋の類いが巨象に蹴り込まれたように、ぎゅうぎゅう泣き声を上げている」「下の方は、前に物が積まれ、もはや引き出せない。開かずの格納庫と考えれば、一応、納得出来る」……壮絶に汚いデスクまわりの描写がこれでもかと続くんですが、これは私のデスクのことなんです…Kさんが私のデスク写真をわざわざ北村先生に送ったんですよね。「売られた!」と思いました(笑)。
K 感動的な光景だったので、つい……。
H 私がドラえもんについて熱く語った内容も、ちゃんと他の場面で活かされていたので、そこは良かったです(笑)。
Y 私は、入社試験の時に指定された本を持っていかず、一人だけ手ぶらで集団面接に臨んだという話を北村先生にしたら、それは「謎の献本」という一編に使っていただきました。
K 『中野のお父さん』は、高校の国語教師で、昔の本をやたらに持っていて博覧強記、ダジャレ連発のツッコミ待ち、という愛すべきおじさん。つまりはこれ、北村先生そのものなんです(笑)。
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