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公開対談 辻村深月×円城 塔<br />小説で“事件”を描くとは

公開対談 辻村深月×円城 塔
小説で“事件”を描くとは

第150回記念芥川賞&直木賞FESTIVAL(別册文藝春秋 2014年7月号より)

出典 : #別册文藝春秋
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

芥川賞、直木賞はモテるのか?

白熱する対話に大勢の聴衆が聞き入った

――最後に、お2人がお互いに聞いてみたいことを質問していただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。

辻村 私の円城さんに対するイメージって、「とにかく男にモテる人」なんですよ。

円城 まあ、トークショーのお客さんはほとんど男子です。

辻村 円城さんがご受賞された後、お祝いの会におじゃましたことがあるんですけど……

円城 おっさんしかいなかったでしょう?

辻村 その男の人たちみんな、円城さんのことが大好きなんですよ。同業者の方、評論家の方が次々にスピーチに登壇されるんですけど、円城さんのお祝いなのに、みなさん円城さんのことをないがしろにする勢いで、「俺の好きな円城塔」「俺だけが知ってる円城塔」についてずっとしゃべってる。たとえて言うなら、歴代の彼女がみんな集まってるみたいな感じなんです。ああいうスピーチを聞いている時、円城さんはどういう気持ちなんだろうって気になってたんですけど。

円城 僕はまわりに男しかいない環境が長かったので、違和感がないと言えばない。もちろん時々ハッと気づくことはありますよ、「うわ、男しかいない」って。でも、理数系の大学のノリはあんなもんですよ。放っておくと男が団子になって遊んでる。

辻村 何かの集まりの時、円城さんが自分のプロットというか、創作メモのノートを持っていらしたことがあったんですよ。結構な人数のいる宴会場だったんですけど、一瞬人が自分のまわりから消えて、なんだろうと思ったら、みんな円城さんの創作ノートのところにワーッと集まってる。それで、見てきた人たちが「俺と同じこと考えてるやつがいるとは思わなかった」とか言い合ってて、私は内心「それ、違うと思うよ」って(笑)。結局あの男子たちの輪に入る勇気がなくて、私はノートを見られなかったんですけど。

円城 なんでしょうね。たまに高校生に「俺のやりたかったことを先に書かれた」とか言われることがありますけど(笑)。

辻村 すごい! いいなあ……。だから、円城さんの集まりに行くのが私はすごく好きで、「円城さん、今日もモテてる」って確認して、満足して帰る。

円城 辻村さんはモテるようになりました?

辻村 賞をとって?

円城 賞をとって。

辻村 モテてないと思う。

円城 直木賞、モテるようになるっていう噂を聞いたことがある。

辻村 (驚いて)えーっ?

円城 芥川賞はモテるって言い張る、上の世代のおじさんたちがいるんですよ。「いやー、あの頃はよかった。もう1回とりたいな」とか言ってて、僕にはそんなことが全然起こらないので、不思議に思ってるんですけど。

辻村 そうかあ……。

円城 なので、直木賞はモテるかというのが、僕からの質問です。

辻村 ありがとうございます。モテたいですけどね。ある人から「辻村さんの小説を読んでる女子って、恋人としては付き合いにくそう」って言われたことがあって、何てことを言うんだ! と憤慨したんですけど、その時言われたのが「辻村さんの読者からは愛人臭がまったくしない」って。「愛人臭か……確かに」と思いました。

円城 確かにと思った(笑)。

辻村 だけど、いい法則もあると思っていて、私の小説をすごく好きだって言ってくれる男性もいるんですよ。サイン会の時も、女性と男性半々ぐらいの割合でいらしてくださるんですね。それで「どの話が好き?」みたいな話をすると、たいてい、ややこしい女の子が出てくる話をみんな読んでくれている。つまり、そういうややこしい女の子のキャラクターを許容してくれる男子がこれだけいるってことは、私の小説を読んでる女の子たちを受け止めてくれるいい男子が、こんなに多く世の中にいるってことなんだと思って、私は幸せな気持ちになるんです。しかも、わりと見目麗しい男子が多いんですよ!

円城 リトマス試験紙みたい。辻村さんの小説を読ませて大丈夫な男子だったら、きっと大丈夫って。

辻村 そう。リトマス試験紙。私の小説をモテるために使ってほしい……って、最後、モテの話になっちゃいましたね。今日はありがとうございました。

円城 ありがとうございました。

(2014年3月1日「第150回記念芥川賞&直木賞FESTIVAL」丸ビル1階「マルキューブ」にて)

別册文藝春秋 2014年7月号

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