■それぞれの創作風景
下村 最初にきちっとプロットというか、骨組みを立てられてから書き出すんですか。
三浦 いえ、そうでもないです。大ざっぱなところは大体決めてますけど、それこそぎりぎりになって書き始めてから考える、みたいなことのほうが多いぐらいですね。下村さんはどうですか。けっこうきっちり決めるほうですか?
下村 わりとそうですね。一番ラストまではプロットをきっちりあげます。あまり文章に頼りすぎても漫画だとまずいんですよ。だからプロットを起こして脚本を起こして絵にする段階で、絵が入ったとたん、これもいらない、これもいらないってカットしていく。台詞の出だしはすごく一生懸命、ああでもない、こうでもないと考えるくせに、実際、そこに顔をつけて吹き出しつけて字が入ったとたん、「こんな長い文章はよくない」って切っちゃうんですよ。だからずいぶん無駄な作業をしてますね。吹き出しってやっぱり限界ありますから。
三浦 面積が限られてる。それに実際描いてみたら、絵が語ってくれることだってあるわけでしょうしね。
下村 ええ。だから生徒にも「喋らせるな。エピソードで見せろ」ってさんざんえらそうに言うんです。でも、削りすぎてもダメじゃないですか。絵でフォローできない分が伝わらなくなってしまう。だから文字だけで書いてる人ってすごく難しいだろうなって思うんです。
三浦 確かに私も、最後がどうなるかを考えておかないと、結局うまくいかなくなるんです。一回書き終えてから、今度またどんどん削っていく作業もありますね。やはり全体を読み返すと、言いすぎてたり無駄と感じる部分が見えてきますから。
下村 とはいえ、あんまりバッサリ切っちゃうと、本人は納得していても、今度は足りないんですよね。
三浦 そうなんですよ。自分ではもう何回も読んで考えたあとだから、なぜわからないんだろうって思うんだけど、説明不足すぎて他の人には伝わらないものになってる。
下村 そのさじ加減は難しいですね。プロット用のメモとかは作っていますか。
三浦 思いつきをなぐり書きするノートがあります。『まほろ駅前多田便利軒』の場合、一回八十枚程度の分量なので、何をする、次何をするっていうのを、五個ぐらい箇条書きするとちょうどいいんです。「ここがキメ」っていう台詞や文章もメモして、勝手にウットリしたりします(笑)。でもキメ言葉を考えておいても、うまく入らなくて結局使わないこともあるんですが。ノートの簡単な設計図を元に、あとは全部最初から書いていきます。場面を飛ばして書かれる方もいると思うんですけど、私は絶対できないです。
下村 じゃ、よく作家の方が最初の一文が書けないで、ずーっと「ウウッ」とかうなっている図がありますけど、ああいう感じで止まっちゃったら、もうそのままなんですか。
三浦 はい、固まったままですね。でも第一文目で詰まるっていうのは、それは書きたくないからなんですよ。何もアイデアが浮かんでないということなんだと思います(笑)。
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