- 2015.10.16
- 書評
油断大敵! 借金返済で困らないための必読書
文:横山 光昭 (家計再生コンサルタント・ファイナンシャルプランナー)
『督促OL 奮闘日記 ちょっとためになるお金の話』 (榎本まみ 著)
お金に苦しむようになるのは、本当にちょっとしたきっかけです。なりたくてなるわけではない。教育資金を準備できなくて借りた、失業して生活費が足りない、パソコンが買いたい、冠婚葬祭が重なってしまった……など、本書に書かれているような、本当に生活上、簡単に起こりそうなことがきっかけです。借金って消費者金融で借りるというイメージが強いですが、クレジットカードのキャッシングも立派な借金。もっと言えば、クレジットカードの買い物だって借金の一種です。そんなことがきっかけで、負のスパイラルに巻き込まれてしまうのです。
一旦巻き込まれてしまうと、なかなか借金が返せなくなる。これは、改正貸金業法が完全施行された2010年までのことで言えば、出資法の上限金利29.2%が存在していたゆえの高金利も影響していたためでしょう。同じ時期に始まった年収の3分の1までしか借入できないという総量規制も、それまで十分ではありませんでしたから、収入により複数の借り入れが可能であったことも影響していたでしょう。お金を借りる人の、お金に対する意識や知識も不足していたことも理由に挙げられます。
金利を定める法が整った今でも、返済日にお金が支払えないという人は、たくさんいます。毎日家計の相談を受けていると、一日に一人くらいは「支払いが大変になってきた」と言います。それだけ借金は身近にあることなのです。そして、ささやかなことがきっかけで予定通りの支払いが難しくなり、それまで良い人という印象だったのに、急に態度がおかしくなってしまう人も少なくありません。
本書ではそのような、人間には表と裏の顔があるのだということも督促の現場を通して、よく伝わってきます。一昔前の、借金の取り立てがどろどろと行われていた時代とは違いますが、今でも多くの人が、払うべき日に払えないという状況に頭を抱えています。その人間模様のヒトコマを捉え、ユーモアを交えた表現が、榎本さんはとても上手い。
お金の貸し借りの法律が整ったことは良いことでした。ですが、それでも支払いが難しくなり、困っている人はいます。今は手取りがどんどん減っています。というのは、給与支給が増えても、税金が増え、社会保障費が増える仕組みになっているからです。給与が増えるどころか、カットされていく人たちだって未だにたくさんいるのです。やりくりがとても難しい時代です。だからつい、お金を借りたり、クレジットカードを使ったり。そして次の月はその支払いでさらに金銭的にきつくなる。そうこうするうちに、総量規制に引っ掛かり、借りることすらできなくなる。――そんな悪循環の繰り返しに陥ってしまう人に、ここ数年で私はたくさん会ってきましたし、こういう話を聞くと、やはり家計のやりくりをすることの大切さを実感するのです。
この本は督促する側からの視点で綴られた話なので、お金を貸す側の意図や戦略、そしてどのようなことで商売に結びつけているのかという実際的なところまではわかりません。ですが、あれこれキャッシングやローンの魅力的な宣伝広告を見ると、優良なお客様にどうにかお金を借りてもらい、金利という利益を得たい、という戦略があるのだということは察しがつきます。そんな誘惑に乗ってしまったのか、ちょっとお金が足りなくなってしまったからか、気軽に借りて返せなくなってしまった人たちの反応が、面白いほど具体的かつ素直に本書では描かれています。読者の皆さんも、お金を借り、返済が近づいた時に本書にあるような言葉が出てしまったら、要注意!
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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