- 2015.10.16
- 書評
油断大敵! 借金返済で困らないための必読書
文:横山 光昭 (家計再生コンサルタント・ファイナンシャルプランナー)
『督促OL 奮闘日記 ちょっとためになるお金の話』 (榎本まみ 著)
事例の部分では職業柄、非常に共感できるものが多く、「あるある」と心の中で言いながら読み進みました。特に、家族には知られてはいけない、ということは本当によくあることです。私自身が接した借金に悩んで相談に来られる方のほとんどが、「家族に言えない」という壁に苦しんでいました。一生懸命隠して、一人で悩み、やはり一人で解決するのは難しいと悟った時に覚悟を決めて、家族に打ち明ける。悩みに悩みぬいた上での告白に、家族の方は、はじめは怒ったりする様子を見せますが、状況を理解すると「早く相談してほしかった」「一緒に頑張ろう」と言ってくれることの方が、私が立ち会った中では多かった。ご本人たちには覚悟とか決心とか、すごく重要で深刻な一場面だったかと思うのですが、私は「家族愛」を感じることができる場面でした。
また本書の、「借金男子の見抜きかた」といった女性ならではの視点も面白い。結婚する前に見抜くことは大切です。ただ、借金しているということだけを見抜くばかりではなく、そこを乗り切り、どう成長していく男なのかというところまで見極められるといいですね。借金でダメになる男はたくさんいますが、逆に大きく成長する男もいるのです。ダメンズ好きな女性も登場しますが、女性は後者を期待するのでしょう。その期待が裏切られるから女性は苦労する、というところでしょうか。
私が借金を抱える人と大勢向き合っていた頃は、榎本さんのいた部署のように督促の初期担当の対応で済む人もいましたが、それ以上に状況の悪化した人が多かった。ですから初期の段階で気が付いて、改善できれば苦労は少ないのになあ、と思いました。ただ、なかなか気が付けないんですよね。みなさんその時その時、返そうという思いで一生懸命なので。
「督促」という仕事についても、「誤解がないように」という思いからでしょうか、支払い忘れた際の連絡をするだけであることが分かりやすく書かれています。そのため、払えない時は相談しやすい対象であることや、相談してくれるのを待っていることなども、良く伝わってきました。督促の仕事としては、罵声を浴びることもあり辛いと思いますが、困っている人にとっては必要な窓口にもなっています。それでも「お支払いがされていませんよ」と連絡を入れるだけで、連絡を受けた人には督促する側の声が怖く聞こえて怒鳴ってしまったりするのでしょう。でも、督促する人も普通の人だから、くじけたり傷ついたりもするわけです。本書では、督促をしている相手の事情を榎本さんが心配していることが伝わるのも、良いと思います。中には、この本で描かれていることが「実際の仕事内容とは違う」「もっと督促は厳しいはずだ」というご意見もあるでしょうが、お金を返せなくて困っている人には、「ちょっと連絡してみようかな」と思えるきっかけになるかもしれません。
お金の貸し借りの法律が改正された現在では、多重債務に悩む人、過払い金請求訴訟が必要な人が減ってきてはいますが、クレジットカードの支払いができない、キャッシングしてしまったけど返せない、リボ払いが全然終わらなくて大変だという方が大勢いるのが現状です。こういう方が解決するための行動をとれるように、お金の使い方を改善できるようなヒントを得るために、本書は有用だと思います。例えばお金の貸し借りについての基本的なこと、さらにはブラックリストや法改正といった実用的に役立つことも分かりやすく説明されているので、面白く読んでいくうちに知識を身につけることができます。
文庫化されて初めて手に取る方も、もしかすると、督促という仕事に興味があるのかもしれませんし、支払いの催促はどのようにされるのか、ということを知りたいのかもしれません。どちらにせよ、お手に取り、あまり人に訊くことができないようなことを知ってもらうのは、とても良いことだと思います。
今回の文庫化に合わせて、一生懸命に頑張る人が「お金に困る」ということにならない世の中になりますよう、榎本さんとともに願いたいと思います。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。