映画「俳優 亀岡拓次」とうとう本日、全国公開です! 原作の『俳優・亀岡拓次』と『のろい男』の著者である戌井昭人さんに、物語のモデルになった土地やお店などをうかがってきましたが、今回が最後です。お楽しみください。
静岡・伊東――「まずいスープ」時代の父
『のろい男』の第4話に出てくる「アイナメ 伊東」。伊東は父が一時、住んでいた土地です。「まずいスープ」に書いたような時期で(笑)。父は「はるひら丸」っていう船宿で働いていたんです。そこの海老フライがすごくでかいんですよ。
伊東の防波堤は、僕が実際にアイナメを釣ったところです。そこに集ってるおっさんたちが、釣りに詳しいんです。1匹釣り上げたら「早く入れろ!」って急かされて。ほんとにぽんぽーん、って釣れるんで、びっくりしましたねー。
その人たちに「戌井さん、1級船舶の免許、取りなよ」って勧められた父は、そのあと、船宿で船頭さんをやってたんですね。釣り船を出したり、船底が透明になってる観光船を操縦したりしてました。
遊びに行ったとき、ベトナム船で父とワカメ採りに行きました。「ベトナム船だからよー」ってみんな言うのが、なんのことだかよくわかんなくて(笑)。
伊東っていう土地はなんだか、いいんですよね。熱海だと観光地だけれど、ちょっとひなびているんです。坂口安吾も伊東に逃げてきて、ここを舞台に「肝臓先生」を書いています。亀岡も珍しく、安吾について考えてますが、劇団時代に誰かに読まされたんじゃないですかね(笑)。
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