生きるためには、なんでもありなのだという鹿野さんの生き方が「フツウ」に生きようとする私たちの「フツウ」を、なんとみすぼらしくさせてしまうことだろう。

 二〇〇二年八月、鹿野さんは、亡くなった。

 通夜、告別式には、会場からあふれるほどのボランティアの人たちが集った。それがなにを語るかは、とても一口ではいえない。

 どうかこの「解説」を読んで、この本を読んだ気にならないで下さい。546頁のどの頁をひらいても、読む人の心に届くなにかがきっとある本です。

 これは渡辺一史さんの第一作です。

 講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞しました。

 その後の八年余りを第二作に集中し、二〇一一年に大冊「北の無人駅から」が出版されました。これも、とてもいい本です。