――そうして生み出された作品にはそんなご苦労は全く感じられず、華やかでいて、すべての女子に身近に感じられる魅力的な物語ばかり。読者としては、依頼してくれた企業に感謝したいところです。
表題作の『おまえじゃなきゃだめなんだ』は、ティファニーやプラチナ・ギルドとは趣の異なる、うどんチェーン店「山田うどん」が舞台の小説。若い頃、恋人をとっかえひっかえ自由奔放に楽しんできた38歳の女性が描かれているんですが、「過去の自分の不誠実が、今こんなかたちの誠実になって返ってきた」というドキリとさせる言葉が出てきたり、うどんを啜る場面からしみじみと深い人生の感慨が痛切に伝わって来る傑作です。
この1編は、山田うどん本を編集した作家の北尾トロさんからの依頼で、制約は全く無し。「なにをどう書いてもいい」って言われて、立川の方の山田うどんを食べに行ってから書きました。私自身が「人生帳尻派」というか、自分のやったことは巡り巡って自分に返ってくる、そうであってほしい、という気持ちがあるので、そんなセリフでも無意識に出たんですね。
他にも今回の本には、2002年・2003年に、まだ自分でどんなものをこれから書いていけば良いのか、書き惑っている時代の「自分寄り」の短篇も入ってますし、全体を書くのに長い時間をかけているんだな、と感じます。
それにしても今の若いひとたちって、ナンパもしないしギラギラもしてなくて、本当に真面目になった。以前に比べると……なんというか、恋愛が清潔になったんでしょうね。まあ、その方が良いです、心の平穏のためには(笑)。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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