マラウイ。これが国の名前で、世界のどのあたりにあるのか。さて、どれぐらいの読者諸賢がご存知だろうか。恥ずかしながら地理音痴の訳者は、白状すると、本書に接するまで、アフリカのどこかの国? ひょっとしたら中南米? ぐらいの認識しかなかった。

 インターネットという便利なものを使って調べてみると――マラウイ共和国。アフリカ南東部、アフリカ大地溝帯に位置する内陸国で、旧称、イギリス保護領ニヤサランド。一九六四年に独立。面積は十一・八万平方キロ。東部にマラウイ湖を擁し、国土の大半が高地にある。人口は約千六百万人(二〇一三年)。通貨はマラウイ・クワチャ(一クワチャは二〇一四年の為替レートで四円弱といったところか)。首都はリロングウェ。公用語はチェワ語と英語。主要産業は農業。世界最貧国のひとつ――といったことがわかる。

 本書の前半では、著者、ウィリアム・カムクワンバ少年の眼を通して、そんなマラウイ共和国の中部の市、カスングにほど近いマスィタラ村の人々の暮らしぶりが描かれる。それはもちろん、「先進国」に住むわれわれ日本人のそれとはかけ離れたものだ。また、犬には名前をつけても猫には名前をつけなかったり、自分の子供に不吉な名をつけたりといったマラウイ特有の風習には、へえっと驚かされたりもする。