さて、そんなウィリアム・カムクワンバ少年――現在二十七歳、もう立派な青年だが――の近況についてひとこと。本書のエピローグでは、南アフリカの〈アフリカン・リーダーシップ・アカデミー〉に入学したところまで語られているが、その後、そのエリート校を無事卒業して、二〇一〇年九月にはアメリカの名門校、ダートマス大学に入学し、今年の六月には卒業。その間にも、TEDでのスピーチや本書の出版、アメリカのトーク番組出演などで得られた国際的な知名度を生かして、母校の初等学校の改修・拡張工事のための募金活動をおこなっている。貧しさのために学校を中途で辞めざるをえず、教育の大切さを身にしみて感じているにちがいない彼ならではの活動で、二〇一三年には『タイム』誌の「世界を変える三十人」に選ばれた。その活動にご関心の向きは彼のサイト(http://williamkamkwamba.typepad.com/)をご覧いただきたい。今後も何に「トライして」何を「やり遂げ」てくれるのか。大いに期待したい。

 本書の共同執筆者、ブライアン・ミーラーは、アフリカの旧ザイール駐在の元AP通信記者で、現在はフリージャーナリストとして、『ハーパーズ』誌や『エスクァイア』誌などに寄稿しており、コンゴ動乱を取材したノンフィクションの著作があるが、アフリカと言えば、「紛争ばかりの取材で、そんな中、ウィリアム少年との出会いはとても新鮮だった」というのが本人の弁。一昨年には“Muck City”というタイトルのアメリカン・フットボールに関するノンフィクションを上梓している。生まれも育ちもテキサスのアメリカ人で、現在もテキサス在住。

 最後になったが、本書の訳出に際しては、新進翻訳家の井本由美子さんにお手伝い願った。そのことをここに記して謝意を表しておきたい。

 二〇一四年十月

(「訳者あとがき」より)