2005.07.20 インタビューほか

わが伯父・直木三十五を語る
破天荒に生きた「奇人」直木三十五

「本の話」編集部

『直木三十五伝』 (植村鞆音 著)

〈小特集〉
・〈インタビュー〉わが伯父・直木三十五を語る 破天荒に生きた「奇人」直木三十五 植村鞆音
魅力あふれる奇人ぶり――植村鞆音著『直木三十五伝』を読む 湯川豊

『直木三十五伝』 (植村鞆音 著)

――植村さんは、直木三十五の甥にあたられます。お父さまの植村清二(元新潟大学教授)さんが直木の実弟です。植村さんはよく直木に似ていると言われてきたそうですが、風貌だけでなく、性格もよく似ていらっしゃいますか。

 小さいときから容貌だけでなく、性格まで直木三十五にそっくりだと父から言われました。そのことが伝記を書く原点になっているかもしれません。性格がどう似ているのかというと……僕は小心者です。子どものころから赤面恐怖症でした。先生から授業中に当てられるのが苦手で。おそらく父はそれを見ていたんじゃないかと思います。直木三十五も、傲岸な出で立ちだったのでしょうけれども、講演では壇上で震えていたと、たしか岩田専太郎さんが言っています。それを隠そうとして、寡黙になったり、傲岸になったりする。

――最初に植村さんが作家・直木三十五を意識されたのは、いつごろ、どういうきっかけですか。

40歳ころの直木三十五

 小学校五年生のときに、学校の先生が家庭訪問で来られて、おそらく父が、「この子は直木三十五の甥なのだ」という説明をしたのでしょう。教室で、詩を読む授業があったときに、「それは何かの譬えじゃないのか」と僕が言ったら、その先生が感心して、「実は、植村君は直木三十五――ナオキ“ミソゴ”と先生は言っていました――という作家の甥御さんなんだ」と。それで「そのナオキミソゴというのはいったい何者なんだ?」と思った。それが最初でした。

――直木の、いわゆるプランメイカーとしての側面を知るに至るのはもっとたってからですか。

 そう、佛子寿満さんと香西織恵さんに会ってからです。

――お二人にお会いになるのは、例の除幕式のときですか。

 そうですね。昭和三十五年十月一日。「藝術は短く 貧乏は長し」という碑が横浜富岡に出来ましてね。そこで知り合いになってから、お二人を訪ねるようになったんです。

――そのころ聞いた話がノートに残っていて……。

 そうなんです。将来何か書いてやろうと思っていましたから、わりと丁寧に聞きました。ただし、いまそのノートを見てみると、専門家ではないから非常に不備なノートで、半分以上が判読不能です(笑)。

――何か書こうというお気持ちがあったのですか。

 将来物を書きたいという気持ちが強くて。きっと、伯父に似ていると言われたことが潜在的にあったのかもしれませんね。最初に就職したのが東映という映画会社だったのですが、文芸脚本課というセクションに配属になったので、そこには脚本家がたくさんいましてね、物を書く雰囲気が相当濃厚にありました。ちょうど内田吐夢(とむ)監督が『宮本武蔵』を撮り始めたころです。僕は、水上勉さんの『五番町夕霧楼』の映画化を提案しました。当時は原作係で、担当していた水上勉さん、尾崎士郎さん、高木彬光(あきみつ)さんが新しく書くものについては目を光らせていて、映画化に値するものを提案するんです。

――その東映をおやめになって、テレビ局に行かれた。

 そうです。東京12チャンネルが出来たので、そこに入った。昭和三十九年、東京オリンピックの年です。

――そうすると、直木三十五が映画界に乗り出して活躍していたころの感じがよくおわかりだと思います。直木の映画界への進出は、何に起因するとお考えですか。

 やはり、ひとつはヤマっ気ですよね。ふつふつとした事業欲みたいなものが若いときから常にあって、もともと小説家になろうと思っていたわけではなかったのでしょう。出版事業や芸術家のサロン、材木商や鉱山業をやろうと思っていた人です。だから、牧野省三さんと会って、「これは、ひと山当てられるかもしれない」と思ったんだろうと思います。それと、本質的に新しモノ好きだから、「映画こそ新しい時代の総合芸術である。原稿用紙に書くのはもう古い」と思って、映画こそこれからのメディアだと考えたんじゃないでしょうかね。

――だれでも、伯父さんにはある独特の親しみを持ちますよね。伯父さんというのはとても自由で、優しくて。直木は早く亡くなっているので実感はないでしょうけれども、イメージとしては、「僕の伯父さん」みたいなものがありますか。

 ありますね。すごく本音で、「会ってみたいな」と思います。会えるものならね。

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直木三十五伝
植村鞆音・著

定価:本体619円+税 発売日:2008年06月10日

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