本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
図書館のこと、立ち読みの客<br />書店員はどう考えている?

図書館のこと、立ち読みの客
書店員はどう考えている?

「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、ときにライバル視されがちな図書館、質問の多かった立ち読み客への印象について答えていただきました。

図書館がなければいいと思いますか? (東京都 50代 男性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 あった方がいいと思います。本との出会いの場は、家庭、学校、図書館、本屋などさまざまです。活字離れのいま、こうした場所を増やしていくことが肝心。個人的にも幼稚園のときに母に連れられて通った図書館が、記憶の残る本との出会いの風景です。本に触れる機会がなければ、本好きは生まれませんので。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 書店員になる前は、図書館ばかり利用していました。本を買うような自由になるお金も持っていませんでしたし、学生時代は、図書館にいると何となく落ち着いたものです。図書館も書店も違う働きを持っていると思うので、どちらも充実している街が私は好きです。どちらが欠けても困ります。互いに関わり合えたらもっと素敵だと常々考えています。

 ハタキで追い払うのは昭和のマンガの世界

 続いて、何人もの方から質問をいただいた立ち読みについて。

書店を図書館のように利用し(無料で本が読める)、何時間も滞在し、書籍を購入しないお客さんに対してどう思いますか? (兵庫県 40代 女性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 なるべく速やかに買ってください、と念じるしかありません。立ち読みのお客様をハタキで追い払うのは昭和のマンガの世界です。いまや立ち(座り)読みでも書店に来てくださるのはありがたいこと。買っていただないのは商品か書店に魅力が乏しいから、かと。ただしあまりにも長時間で他のお客様にご迷惑がかかると判断したときは、お声かけさせていだだくこともあります。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 小売業なので、お客様のご購入なしに、お店は成り立たないと思っています。数回、立ち読みをされているときは、「気分転換かな」とか「悩まれているのかな」と思います。毎日毎日何もご購入されない方がいらしたら、お顔を覚えるので時間を計ってお声かけさせていただくと思います。例えば、立ち読みをされる方がデパートのお惣菜売り場で働いていて、「美味しそう」と選びながら喜んでいる人の顔を見るのが好きだとします。けれど、毎日試食だけして帰られたら、「こちらの接客が良くなかったかな」「買って帰りたいと思ってもらえないのかな」と感じるように思われます。洋服屋さんでしたら、毎日試着だけして帰られたら何となく悲しい気持ちになりませんか? 気に入ったものがあったら購入しようと思われている方は、伝わるものです。入店したら絶対に購入して欲しいとは思いません。しかし、「立ち読みばかりしていて申し訳ないな。あのドラマが面白かったから次はこちらで購入しよう」という気持ちが一人一人にあるかないかで、小売業の人たちの意識も大きく変化するように思います。何時間も滞在してくださるのは居心地が良いということなので嬉しいです。しかし、生活を担っている人が働いているのだという意識が少しでもあったら本屋だけではなく小売業全体が活気を見せてくれるように思います。閉店を経験しているので、長くなってしまいました。これを読まれている方々に何かが伝わることを願っています。

 こんな質問もいただきました。

立ち読みならぬ座り読みのできる書店がテレビで紹介されていました。韓国では床に座って読んでいる人もいるみたいです。書店のいいところは、実際に手に取って試し 読みができるところだと思うのですが、どの程度まで許されるのか考えてしまいまし た。みなさんはどのように考えていますか? (愛知県 40代 女性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 カフェ併設や椅子やテーブルを用意して選書できるスペースも、珍しくなくなってきました。購入目的のための吟味ならよいのですが、一日がかりで何冊も読了される方もいます。貴重なスペースです。皆さんがご利用いただけますよう利用時間はぜひご配慮を。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 お店の方針によりますが、当店では、座られてしまうと通路を完全に塞いでしまうので気付いたらすぐにお断りしています。『座り読みが出来るお店』と宣伝しているのでしたら、自由に座って読んでも構わないと思います。ただ、小売店は売ったお金で生活しているので、一人一人が自然に配慮出来る世の中になるといいなと感じています。

 

岡一雅(MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)

 棚前での立ち読みと店舗側が用意している椅子やベンチでの座り読みでしょうか。ただし他に本を探されるお客様もいらっしゃるので、棚に寄りかかるような姿勢での立ち読みや通路などでの座り読みはNGだと考えます。ちなみに、ジュンク堂が座り読み用の椅子を置くようになったのは、高価で大部な学術書を購入される際、じっくり内容を吟味して決めて頂く為で、喫茶コーナーへの条件付き持ち込みOKの試みも、書店で過ごす時間を愉しんでもらうため、と聞いています。

【次ページ】なぜコミックはビニールで包んである?

プレゼント
  • 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/3/29~2024/4/5
    賞品 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る