- 2016.04.02
- 書評
組織の「グチャグチャ」にも対応可能! 33歳元ミクシィCEOが愛読する歴史本とは?
文:朝倉 祐介 (元ミクシィCEO)
『新世代CEOの本棚』 (堀江貴文・森川亮・朝倉祐介・佐藤航陽・出雲充・迫俊亮・石川康晴・仲暁子・孫泰蔵・佐渡島庸平 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
明治維新もそうですが、戦後の混乱期に、本田宗一郎さんや盛田昭夫さんのような偉大な経営者、ビジョナリーが登場したのは、辺り一面が焼け野原で、とにかくモノがない、勤めるべき会社もない、つくるしかないという必要に駆られた状態だったからこそ、そういうモメンタムが生まれたのだろうと思います。
極端な話ですが、大企業が軒並み潰れて人材が放出されれば、日本でも続々と新たな会社が生まれたり、自然とイノベーションの芽が出てきたりするのでしょう。でも、さすがにそれでは痛みが大きすぎます。できるだけ潰さないようにしながら、擬似的な焼け野原をつくる方法を考えなければいけません。
『幕末史』だけではなく、同じ半藤さんの『昭和史 1926-1945』『昭和史 1945-1989』を読むと、日本人のメンタリティは大して変わらないのではないかと思います。起こってほしくない可能性からは目を背けて、想定さえ避けるのが日本人のメンタリティではないでしょうか。
IT業界で考えてみても、実名のフェイスブックなんて日本では流行らない、ガラケーよりも性能が悪いiPhoneは日本では売れない、と言われていました。また、ゲームの主戦場がガラケーからスマホ、ブラウザからネイティブアプリに移っても、既存のゲーム開発者は即座には現実を素直に受け入れることができませんでした。きっと根っこは同じです。
口にしたことは現実になってしまうという「言霊(ことだま)信仰」のせいか、起きてほしくないことを言葉にすること自体がタブーになってしまう。事業が衰退局面にあることは誰もが気づいているのに、口に出すことさえ許されない雰囲気が支配する。これでは時代の変化に対応できません。
今も昔も人間はそれほど変わらないので、歴史の知識があると、こういう出来事が発生したら次はこうなる可能性が高いと、ある程度、想像力が働くようになります。『失敗の本質』は言わずと知れた名著です。
組織の中には、全体の意思決定を無視して走り出す「関東軍」のような人たちもいれば、どう考えても勝ち目のない「インパール作戦」を強行しようと主張する人たちも出てきます。
その結末がどうなったか、知識として知っていれば、「ああ、出た出た」ということで先回りして食いとめることができます。挑戦はできるだけ応援すべきですが、周囲が制止できないまま当事者の意地で進めるインパール作戦であれば、早急にとめないと傷が深くなります。
歴史本を読む楽しみは、年齢とともに変わります。社会人経験や経営経験を積むことで、歴史の見方もずい分変わると実感しています。
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