
伝説の三本足の鳥・八咫烏(やたがらす)一族を描いたシリーズは、8年の時を経て今年ついに完成した『玉依姫』を加え、累計60万部の大ヒットシリーズに成長。しかし、中世日本の雅な風俗を下敷きに創出された異世界ファンタジーに魅了されてきた熱心な読者ほど、5作目となる『玉依姫』には衝撃を受けるかもしれない。なぜなら、冒頭から「バスを乗り継いで祖母の故郷に辿り着いた女子高生の志帆」が登場するのだから。八咫烏たちはどうやら、現代日本と地続きの場所に存在しており、その世界の成り立ちには複雑な歴史と秘密があったことが明かされる。
「新刊を読む度にシリーズ既刊のイメージが変わり、何気ない一文に別の意味があることに気づくようにと仕込んできました。『もう一度全部読み返さなきゃ!』と、読者の方が本屋さんにダッシュしてくれるようなものを毎回目指しています」
自分に害をなす存在を愛することができるのか。信じ難い決断を迫られた志帆のとった道は? そして、すべての鍵を握る100年前の謎とは? 壮大なファンタジーを通して描かれる、世界と自分の関わり、深い人間観。ラストで去来するのは、痛みとも感動ともつかない大きな感慨だ。来年刊行の『第一部完結篇』は、どこまで読者を驚かせてくれるのか、予想もつかない。
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