発明王エジソンが一日の睡眠を五時間しかとらず、「眠ってばかりいるのは、時間と活力とチャンスを無駄にすること」と豪語していた。そして夜を明るく照らし、その時間を睡眠にではなくほかの活動にあてられるよう、石油ランプやガス灯に替わる「白熱灯」を発明した、というエピソードは楽しい。

ワイズマン博士のこれまでの本と同様、読者が簡単にできる実験もふんだんに用意されている。自分の睡眠を採点するテストや、寝相でわかるその人の性格、夢占い力の測定テストなど、実際にいろいろ試してみられる点もうれしい。こうした工夫のおかげで、科学の本にありがちな硬い印象や取りつきにくさがない。科学的な裏付けが充分であると同時に読み物としても楽しく、ユニークな本になっている。とくに今回は、巻末にワイズマン博士が友人のジェニー・ハンベルトンとともに創作した童話『ドナルドと象の、学校での一日』までが、特別付録でついているのだ。科学者でありながら、なんと多彩な才能の持主なのだろう。とかくむずかしくなりがちな科学的な内容を、ユーモアたっぷりにわかりやすく教えてくれるのは、まさにワイズマン博士ならではである
リチャード・ワイズマン博士は、『運のいい人、悪い人』(角川書店)、『その科学が成功を決める』や『その科学があなたを変える』や『超常現象の科学』(いずれも文藝春秋)などの著作で、日本でもよく知られる英国の心理学者である。つねに実践的でわかりやすく、ユーモアあふれる解説で人気を集めている。博士が望んでいるように、この本が読者の方々にとって眠りの大切さに目覚めるきっかけとなり、日々の心地よい眠りをもたらすことになれば、さいわいである。
二〇一五年九月
(訳者「あとがき」より)