書評

作っておいしい、読んで楽しい
日本の食卓の100年を凝縮した一冊

文: 伊藤 剛寛 (読売新聞生活部次長)

『読売新聞家庭面の100年レシピ』 (読売新聞生活部 編)

伊藤剛寛1965年生まれ。読売新聞生活部次長。「100年レシピ」は、生活部員8人で担当。生活部は、衣食住、女性の働き方、育児、消費者問題など暮らしにかかわる分野を広く取材。食に関しては、毎日のおかずのレシピや食材の産地ルポ、料理の基本の指南など、多角的に取り上げている。

 ところで、「家庭面100周年ってどういうこと?」と思われたあなたへ。

 読売新聞は、1914年(大正3年)、女性向けのページ「よみうり婦人付録」を創設しました。衣食住の実用情報、女性の生き方といったテーマを取り上げるページです。いまでこそ、ほとんどの新聞に家庭面がありますが、その先駆けだったわけです。戦争による中断はありましたが、今日まで暮らしに関する情報を発信し続けています。

 100年間の料理記事を振り返り(常設料理コラムだけで2万件以上あります)、レシピを通じて食卓の歴史を記録しようと、始めたのが「100年レシピ」です。生活部員がチームを作り、担当しました。

 選ばれた100のレシピを見て感じるのは、日本の家庭料理のパワフルさです。海外の料理を貪欲に取り込んでいます。それも、巧みに日本流にアレンジしながら。「絶対ご飯に合わせてやる!」という台所からの魂の声が聞こえてきそうです。トンカツもコロッケもハンバーグも、ご飯とみそ汁の定食スタイルがすっかりなじんでいます。カレーも牛丼も、ご飯との相性が絶妙。ほかにも、カレーうどん、スパゲティのタラコあえ、豆腐入りハンバーグなどは、その組み合わせのアイデアに、同じ日本人ながら脱帽します。

「店の料理は日本舞踊、家庭料理は盆踊り」。100年レシピ選考委員、野崎洋光さん(日本料理店「分とく山」総料理長)の言葉です。料理店には様々なルール、流儀があるが、家庭料理は自由。カレーでも刺し身でも、ご飯に何を載せて食べてもいい。至言ですね。

 和食の力強さを感じる一方、現在の家庭の食事については、問題も指摘されています。栄養バランス、調理技術の継承などの課題も、100年レシピ選考の過程で改めて浮かび上がってきました。

 十代の娘2人は、カレーを作ったりクッキーを焼いたりするようになりました。「牛丼作りたい。肉を焼いて、ご飯に載せればいいよね」とまだまだトンチンカンですが、自分も、自炊を始めたのは就職してから。本書を渡して、ゆっくり伝えていきます。

 家族がいてもいなくても、家で作って食べれば家庭料理だと思います。家庭料理は食生活の基本。『読売新聞家庭面の100年レシピ』がそのヒントになれば幸いです。

読売新聞家庭面の100年レシピ
読売新聞生活部・編

定価:本体1,500円+税 発売日:2015年04月06日

詳しい内容はこちら


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