- 2015.04.09
- 書評
作っておいしい、読んで楽しい
日本の食卓の100年を凝縮した一冊
文:伊藤 剛寛 (読売新聞生活部次長)
『読売新聞家庭面の100年レシピ』 (読売新聞生活部 編)
ジャンル :
#趣味・実用
「100のレシピを順番に作るのが楽しみ」「新聞記事を切り抜き、ファイルしている」「夕食の献立選びの良きアドバイザーとなった」――。
「100年レシピ」を読売新聞に連載中、多くの読者からこんな声をいただきました。
そして、しばしば聞かれたのが、「本にはならないのですか?」という質問です。
なりました!!
「100年レシピ」は、読売新聞家庭面創設100周年を記念し、これまでの料理記事から、次の時代に伝えたい100のレシピを選ぶという企画です。食の専門家による選考委員会を設け、2014年4月から15年2月まで、1年かけて紙面で発表しました。
大正時代のトンカツ、コロッケ、シチュー、昭和戦前のチャーハン、おはぎ、戦後の豚肉のキムチいため、定番のハンバーグ、ギョーザ、太巻きずしと、和・洋・中様々な味を取りそろえました。作っておいしい、読んで楽しい。日本の食卓の100年を凝縮した一冊です。
例えば、1958年(昭和33年)の麻婆豆腐。味付けは、みそ、唐辛子、ニンニク、ショウガなどで、豆板醤や山椒は使っていません。中華料理が日本の食卓に広がり始めた頃のレシピで、優しい味わい。我が家でも、子どもが喜んで食べます。
「コンビーフハツシ」という耳慣れない料理は、1937年(昭和12年)のレシピ。コンビーフと、ゆでて裏ごししたジャガイモを混ぜて丸め、バターで焼きます。ジャガイモはつぶすだけでもOK。ビールのつまみに最高です。
読めば、食卓の変化も感じることが出来ます。本書は、洋食を中心に紹介した「食卓を変えた味」編、「和食の力」編、「至福のおやつ」編など7シリーズで構成。トンカツの歴史、たらこスパゲティの誕生物語、茶筒を使ったアイスクリーム作り体験、各地の郷土料理ルポなど、読み物も満載です。