砂漠のど真ん中でおしっこ
戌井 今回の映画は目まぐるしく場面が変わるから、撮影が大変だったんじゃないですか。
横浜 はい。毎日違う映画を撮っている感じでした。
戌井 時代劇ありVシネマあり……。僕は時代劇のシーンに出演させてもらったんですけど、あれは過酷な撮影でした。
横浜 あの日は全日程の中でもいちばん慌ただしい日でした。あんな日に来ていただいてすみません。
戌井 いやいや、山﨑努さんとご一緒だったので、楽しく過ごせました。山﨑さんは四年前に『俳優・亀岡拓次』が出たとき、週刊文春の書評で誉めてくださったんですよ。文庫が出たときには解説も書いていただいて。映画化が実現したら是非出演していただきたいと願っていたんですけど、まさか共演までできるとは。
横浜 あの日は夜中の一時くらいまででしたかね。山﨑さんのオーラを感じながら撮影を進めました。
戌井 山﨑さんも「あんなに夜遅くまでやったのは久しぶりだぞ」とおっしゃっていたらしいです。
横浜 私はもう怖かったというか、背中が熱かったです。
戌井 横浜さんの後に、山﨑さんがもう一人の監督としている感じでしたもんね。
横浜 山﨑さんに関しては演技プランも全部お任せでした。サングラスと帽子は自前で用意してくださったんですよ。脚本にもかなり意見をくださいました。
戌井 そうだったんですか。
横浜 すごく的を射た指摘をしてくださるんですよ。後に続くシーンのことも考えた上で、時代劇監督の自分というのを演じていらして。たとえ短い場面であっても、存在感が圧倒的でした。
戌井 山﨑さんは夜中に撮影が終わって、そのまま車で東京に帰られたんですよね。
横浜 ホテルの用意はあったんですけど。うわーこんなに遅くなって怒らしちゃったかなあと冷や冷やで……。
戌井 そんなこと全然なかったと聞いてます。でも、おかげで僕が山﨑さんの部屋に泊まらせていただきました。冷蔵庫のビールも飲んでいいよって言ってくださって。ちょっと得した気分でした(笑)。
横浜 舞台のシーンでは、三田佳子さんにも出ていただきましたが、緊張しましたね。
戌井 最後は、映画内映画として「外国映画」まで撮ってた。
横浜 スペッソ監督役の役者さんは大変でした。原作でセリフを覚えないで現場入りする役者が出てきましたが、まさに彼がそんな感じで。
戌井 そんなことあるんですか?
横浜 『亀岡』の登場人物そのままのような役者でしたよ。面白いんだけど、実際にいると結構困ります(笑)。
戌井 亀岡がスペッソ監督作品に出演するためにモロッコの砂漠に行きますが、あのロケ地はどこですか。
横浜 浜松の中田島砂丘です。日本三大砂丘の一つ。砂漠に見えるアングルが一つしかなくて、なかなか切り取るのが難しかったです。
戌井 そこは僕も斉藤和義さんのPVの仕事で行ったことあります。
横浜 亀岡だったら砂漠で何をするんだろうと考えて、おしっこしたらどうだろうかと提案したら、プロデューサーにあっけなく却下されました(笑)。その後、戌井さんが何かのインタビューで、モロッコの砂漠でおしっこをしたら、あまりの熱ですぐ蒸発したと話していらしたのを読んでびっくりしちゃって。何か発想が同じだなと。
戌井 車で砂漠のど真中にあるテントまで連れていかれて、「これから一時間適当に歩いてこい」と言われたんですよ。どこに行ったらいいかわからなかったんだけど、テントを見失わないようにとにかく歩いていって。トカゲがいたりしてそれなりに飽きないんだけど、あたり一面砂しかないから、あとは何もやることがないわけですよ。
横浜 まあそうですよね。
戌井 ちょうどテントが見えなくなったとき、なぜかおしっこしてやれと思って。もうね、ファーッと消えていってすぐ乾く。
横浜 絶対に安田さんにおしっこしてもらうべきだったなと後悔してます(笑)。
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