- 2015.12.17
- インタビュー・対談
手紙こそ親から受け取る素晴らしい財産――千住真理子さんインタビュー(前編)
「本の話」編集部
『千住家、母娘の往復書簡 母のがん、心臓病を乗り越えて』 (千住真理子・千住文子 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
手紙は本心をさらけだす最適な方法
――どんなときに手紙を書いていらっしゃいましたか?
千住 私は職業柄いつもヴァイオリンケースを持ち歩いていますが、とにかく楽器は重たいんですよ。ヴァイオリンを守って歩くのが第一なので、手紙を書くために持ち歩くには紙が一番軽いけれども、それだと書いてすぐに送ることができないから、やっぱり携帯を使おうと。移動中の新幹線の中で携帯で編集者へメールを送り、それをプリントアウトして母へ郵送してもらっていたんです。演奏会へ行く移動中にメールを打つのが私にとっては一番書きやすかった。今ではもう癖ですね。
一方の母はといえば、日中だとばたばたするから、誰にも邪魔されない真夜中に手書きで書いていたようです。日中会っても、手紙でのやりとりのことはお互いに一切、知らん顔。書いたとも言わない。たまに母が、「あなたね、あんなに難しい投げかけをしてきて、私どうやって書いたらいいのよ。ちょっとヒントを与えなさいよ」なんて言ってきたことがありました。でも私は「絶対に言わない。そんな話をしたらつまんないでしょう」と言い返して。それ以来、母は私に面と向かって手紙のことは言わなくなりました。
――じゃあ、本当に文面を通じてだけのやりとりですね。ご家族のこと、女性としての生き方、ヴァイオリニストという仕事、生と死についてなど、心の奥底をさらけ出してお2人とも書いていらっしゃる。読者の目は気にならなかったのですか?
千住 それは完全に忘れていました。というのは、書いた後に公にする前の校正の段階で削ればいいと思って、とりあえず本心を綴っていったんです。これは書くのをやめようとか言っていたら書けなくなっちゃうから。でも結局、全然削りませんでした。
――メールでの直接のやりとりではなく、手紙という形はどうでしたか?
千住 もうねぇ、手紙で良かったと思うことは沢山ありますね。やっぱり、こんなに本心をさらけ出せる方法は、他にない!(きっぱりと)手紙だと素直に書ける。恥ずかしいなって思うようなことも書いちゃえる。相手とのやりとりの間に、時間と空間が入るのがいいんでしょうね。
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