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井伊直虎ほか、戦国時代に家の存続をかけて戦った三人の女たちを描く

井伊直虎ほか、戦国時代に家の存続をかけて戦った三人の女たちを描く

「本の話」編集部

『おんなの城』 (安部龍太郎 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #歴史・時代小説

――戦国時代を生きた女性についての資料は少なかったのではないでしょうか。

 戦国時代の女性については、記録がほとんど残されていません。歴史的な背景と、主人公が生きた当時の周囲の状況、断片的に残っている資料から浮かび上がらせました。資料は少ないのですが、主人公がどう生きたかを描くのは文学の領域ですから、逆に歴史から離れて自由に書ける部分もありましたね。

 さらに、戦国時代は今も、250年続いた江戸時代の史観で語られています。ですから、女性についても、当時の日本人にはあまり重視されていなかったはずの儒教の考え方が反映されてしまっている。女性を主人公にして戦国時代を描いたのは、今まで伝えられてきた歴史観に対する挑戦の一環でもあるんです。

――井伊直虎もあまり知られていない存在でしたが、2017年のNHK大河ドラマの主人公に決まって有名になりましたね。

 徳川家康について書くためにいろいろと調べていて、家康が遠州攻めの際に通過した井伊谷も、実際に訪ねて取材しました。井伊谷は非常に狭い場所ですし、なぜこんな辺鄙な場所に井伊家という名家が続いたのか不思議に思われるかもしれませんが、浜名湖や天竜川の水運を考えると、あの地が栄えたのはよくわかります。そういうことを調べるうちに、井伊直虎も面白いな、と興味が出てきたんです。

 三河の徳川、甲斐の武田、駿河の今川のちょうど中間にあるために、どこからも誘いがかかるし、どこからも狙われる。そんな中で身を処していく難しさがあって、対応に失敗した男どもがみんな死に絶え、最後に、出家していた女性が還俗して直虎と名乗って女地頭となる。しかも、結果的に、井伊直政という歴史上に名を残す武将を育て、井伊家を守ったわけです。女が男となってこの戦国の世を闘ったらどんな闘い方をするのかを、「湖上の城」で私なりに描いてみました。

安部龍太郎

安部龍太郎

1955年福岡県生まれ。久留米高専卒業。90年『血の日本史』でデビュー。
2005年『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞を受賞。13年『等伯』で第148回直木賞を受賞。著書に『信長燃ゆ』『下天を謀る』『蒼き信長』『レオン氏郷』『冬を待つ城』『維新の肖像』『姫神』など多数。

単行本
おんなの城
安部龍太郎

定価:1,540円(税込)発売日:2016年09月29日

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