『花まんま』は、あるテレビニュースを見たことがきっかけで創作した、と以前朱川さんに伺った。
それは、理不尽な事件で殺害された女性の父親のインタビュー。父親は、娘が苦しんで死んでいった時、知らずに昼食を楽しんでいた。そんな自分が憎くて許せなくて、以来食事が喉を通らなくなってしまったという。
朱川さんは、どこかでその父親の目に触れることを願って『花まんま』を書いた。「自分を責め続けるあなたを、亡くなった人はきっとあの世で心配しているよ」というメッセージを込めて。
その父親が『花まんま』を読んだかは分からない。でも、朱川さんのメッセージは同様な気持ちを持つ多くの人に届き、その人の人生は物語に触れる前と後とでは変わったに違いない。
良い小説、面白い小説はよくあるが「人生に効く」小説はなかなかない。しかし朱川作品は、「いい話」であれ「悲しい話」であれ「怖い話」であれ、それを必要とする人に確実に、効く。朱川さんがどの作品にも「こういう人の心に届けたい」と、想いを乗せているからだと思う。
勿論、新作『わたしの宝石』も同様だ。
6編の作品の中に、誰もが必ず「人生に効く」物語を探し出すことだろう。
私は「わたしの宝石」のある一編に出てきた「誠を尽くす」という言葉を日に一回は使うようになった。
例えば「これではまだ誠を尽くしたとは言い難いな」とか「結果は伴わなかったけど誠を尽くしたからいいや」などというように。
自分で誠を尽くしてさえいれば良いのだ。他人からの評価や自分ではどうしようもないことが、どうでもよくなる。この言葉で人生かなり楽になった。
私にとって、朱川作品は「宝石」である。
ただその「宝石」を隠匿し一人で楽しむつもりはない。
「この宝石美しいよね」と全国の人々と共有したい。
だからまた、朱川作品のドラマ化・映画化を画策するのである。
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