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堀井憲一郎さんトークショーレポート

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「本の話」編集部

『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎』 (堀井憲一郎 著)


ジャンル : #ノンフィクション

「吉野家のつゆだく」を求めて

司会 調査にも、さまざまなパターンがあると思うのですが。それぞれどんな感じでしょうか?

堀井 まず、ひとりで調査するパターンがありますね。「日本三大急流で最も急流なのはどこだ?」とか。バイトの人には「レギュラーねた」を渡しておくんですね。「何も言わなかったら、これやって」的なものを。「『笑っていいとも』の100人アンケートのゲストと結果を調べてもらうとか。1度、ストップするのを忘れたことがあって。「阪神タイガースの試合結果をスクラップして」といったら、そのままバイトが延々と、優勝するはずもない阪神の試合と記録をスクラップしていたりとか(笑)

司会 バイトの期間の最長はどれくらいなんでしょうか?

堀井 2年、3年とか普通にいましたよ。「あのう、僕もうすぐ卒業するんですけど」とかいわれてね。「ずっと調べているネタの引き継ぎ、どうしましょうか?」とか相談されましたよ。たしか「TOKIOのメンバーがドラマの中で何を食べてるか?」を延々と調べてたのかな。結局「じゃあ、すぐやるわ」とネタにしましたよ。

司会 結構、忘れてたりするんですね。

堀井 自分が、すべてを把握してないほうが、良かったりするんじゃないかと。データもね、2年も3年も長く調べていればいいものでもなくて。3ケ月くらいでも、終着点が、きゅっと決まっている物の方がいい感じがしますよね。その方が力があるというか。ただ、何回かに1回は、「めちゃめちゃ調べてるじゃん」というのを見せたいなというのがありますよねえ。

司会 この本『かつて誰も調べなかった100の謎』の中で、「大変だった」という調査はどれでしょうか?

堀井 吉野家ですね。「つゆだくの現状」を調べるために、都内23区にある154軒を、すべて1人で歩きましたからねえ。23区別にそれぞれ1軒、23軒でいいじゃないかとも思ったんだけど、行きだすと止まらなくてね(笑)。調べだしてから、本当に毎日1軒巡ってましたね。「つゆだくはこうなっています」と文春に書いたら、しばらくして吉野家の社長さんとラジオで一緒になりましたねえ。

司会 なにか、筋金入りのストーカーといった感じもするんですが。今でも吉野家は?

堀井 行きます、行きます。280円になってから、特に(笑)

司会 そのほかに大変だった調査はありますか?

堀井 これも本の中に入れてありますが、「全局のアナウンサーの映っている時間を調べる」というものが大変だったです。合計調査時間が1000時間を超えましたからね(笑)。それなのに、出てきた結果をいま見ても、なんの意味もないという(笑)。この前、TBSのアナウンサーの方から「載せていただきました」と声かけられたことはありましたけど。あれが、やりたいことをやった頂点でしたねえ。ダチョウ倶楽部の芸じゃないですけど、体を張って「大変だった、大変だった」と見せるのが芸になったというかね。基本的に、邪道ですよねえ(笑)

司会 それでは、連載の中での切り口ごとにお話しを聞かせてください。堀井さんの中で「これは、厳しかったなあ」というものはありましたか?

堀井 本にも入れた「郵便ポストに回収にくるのは何時何分か?」というネタ。これはもう、ひたすら見続ける(笑)。ポストの横に立って。ポストの横って、あんまり隠れるところがないんですね。もの凄い変なところに立ってなきゃならないんですよ。それに雨が降ることだってあるでしょう。傘さしてなきゃいけないし。おかしいでしょう、そんな人? さらに、しばらくいて回収が来ない時、これはもう回収したのか、まだ来てないのか判断がつかないんですね。結論としてはね・・・「だいたい時間通りに回収に来る」ですかねえ(笑)

司会 本の中には「菅野美穂の写真集を、いろんな編集部に探しに行く」というネタもありましたね。

堀井 そう。今では考えられないんですけど、菅野美穂の写真集が、全然見られない時代があったんですよ。1997年だったかな。で、マスコミ関係にも出まわってないというのを聞いたんですよ。それで、雑誌の編集部とかテレビのスタッフルームとか25ケ所を調べたんですね。文春とか新潮とか、付き合いのあるところはいいんですけど、さほど付き合いの深くないところにお願いをするのは大変だったですね。それなのに、この調査を雑誌に載せたら、あるラジオの人から「ホリイちゃん、今回、楽な調査で手を抜いたでしょ?」って言われて「ええーっ?」っとなって。ああ、苦労と言うのはひとには伝わらないものだなあと思いましたねえ。

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ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎
堀井憲一郎・著

定価:1890円(税込) 発売日:2013年08月03日

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「若者の愚行」を貫いた調査が、気づかれざる日本を描き出す 呉 智英

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