- 2013.08.27
- インタビュー・対談
堀井憲一郎さんトークショーレポート
「本の話」編集部
『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎』 (堀井憲一郎 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
東海道を歩きながら考えたこと
司会 そういえば「東海道を実際に歩いてみた」というネタは、雑誌だと、そうとう苦労しているように見えるのに、実際はそうでもなかったとか?
堀井 そう。実は東海道なんて、実際に歩けばいいだけなんですよ。あれは、2000年くらいから、歩き始めましたねえ。当時ラジオで一緒にお仕事をしていた宮川賢さんが「万歩計で、東海道を歩くのに換算したヤツがあるじゃない。あれって、正確なのかな?」って聞いてきて。じゃあ、調べようかということになって。「歩いてくるわ」と。1、2日つけて歩いてわかったのは、「歩幅設定を正確にやれば、正しい距離が出る」ということ(笑)。
司会 自分の歩幅って、なかなか正確に知らないですからねえ。
堀井 自分は66センチなんですけど、バイトとかいろいろ誤差があったりして、距離が正確にでなかったりして。あと、歩幅を一定にすることが大事。大股とか早歩きではなくて。でもこれは、気をつければできるんです。伊能忠敬がやったようにね(笑)。
司会 東海道を歩いているとき、何を考えていたんですか?
堀井 うーん、終わってから銭湯に入ろうかな、とかね。実は、静岡県に入ったら、銭湯がなかったんですよね。三島にあったくらいで。考えてみれば、銭湯って都市部のものなんですよね。ある程度の人がいて、しかも風呂が無い人まで住んでいる密集地帯でないといけないわけですから。本当に、名古屋までは銭湯がなかったですね。
司会 東海道を歩いたことによって、堀井さんの中で変わったことはありますか?
堀井 2000年代になって、私は落語の方に入っていくんですけど、「体を使って考える」ということがだいぶできるようになりましたね。東海道を実際に、歩き切っちゃいましたからね。「神田まで歩くとどうか。八王子まで歩くと大体どんなものか」とか体で分かるんですよね。落語を聞いていても、話の中の江戸時代の登場人物は、電気のないなかで町を歩いていたわけで、それが感覚的に分かるんです。「電気がないと暗くて3階以上に、人は住めないな」とか「川沿いに住まないと水がくめなくて不便だろう」とかね。
司会 江戸時代の感覚が、身に着いたのですね。それが落語の調査に結びついていったという。
堀井 落語の調査を始めたのは2004年の2月4日。節分の日だから良く覚えています。2001年に志ん朝師匠、2002年に小さん師匠と、重鎮が亡くなった感じがして。それと(柳家)喬太郎さんとかが自由にやりだした時期が重なったんですね。その変化を感じたので、2004年から談志をすごく追いかけて見に行くようになったんですね。7割くらいは直に見たと思いますよ。本当に2005年くらいから、調査とシンクロするように寄席が混んできたと思います。それで、落語専用にバイトスタッフを雇って、本格的に調べるようになったんです。
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