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女子御三家・傾向と対策(著者による解析、入試問題と一部解答つき)

女子御三家・傾向と対策(著者による解析、入試問題と一部解答つき)

問題分析:矢野耕平(『女子御三家』著者) 分析協力:石井陽一、及川慎也

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

女子学院中学校

2015年度入試問題分析

 JGは4教科均等配点という比較的珍しいタイプの学校。言い換えれば、算数・国語・理科・社会を高いレベルでバランス良く学習することが求められる。JG卒業生のことばに「その場その場を上手に切り抜ける要領の良い子ばかり」とあったが、それもこの入試問題を見ると納得できるだろう。苦手科目を放置するのはもってのほか。JGの問題は、論理的な思考力をフル回転させつつ、多くの問題を制限時間内でスピーディーに、適切に解いていかなければならない。


2015年度入試問題

算数(制限時間:40分/配点:100点)[PDF:218KB]
理科(制限時間:40分/配点:100点)[PDF:534KB]
社会(制限時間:40分/配点:100点)[PDF:740KB]


科目別問題の傾向と一部解答例

◆算数(制限時間:40分/配点:100点)

 2015年度は問題中の空欄の数が24個と昨年よりも大幅に減少。全問解くためには、空欄一つあたり100秒で処理することになるので、今年は比較的余裕のある問題量。ただし、立体図形が2題もあり、骨のある問題であった。とりわけ、大問6の水槽の問題は計算が複雑であり、戸惑った受験生も多かったことだろう。

○合否を分けた問題

【大問4】

※クリックすると拡大します

・解説

 折れ線グラフを読み取るには、曲がり角に注目すること。最初の折れ目は1回目のバスのすれちがい。2つ目はAがG町に到着。3つ目はAがG町を出発。4つ目はBがJ町に到着。5つ目はBがJ町を出発。6つ目は2回目のバスのすれちがい。よって、(3)はすぐに105とわかる。AはBとすれちがうまでに67.5分、その後G町に到着するまで37.5分かかり、AとBの速さの比が9:5となる。あとは地道に計算するのみ。

 JGではよく問われる速さの問題だが、差が付きやすい問題でもある。素早い処理が必要なJGだが、問題を紐解いていく本質的な理解は必要。順を追って手早く片付けていく華麗さが求められる。

・解答

(1)63 (2)35 (3)105 (4)189 (5)217.5


◆理科(制限時間:40分/配点:100点)

 形式は例年通りで、40分で多くの問題を解かなければならない作りである。大問1と2は高校で学習する内容だが、丁寧に文章や図表を読み取れば正解を導くことができる問題である。JGの理科は、大半が選択肢や用語を答える問題ではあるが、化学計算の知識が問われたり、記述問題の出題もあったりする。これらをテンポよく解き進めるためには、深い理解と広い知識が備わっていることが必要。日ごろから本質(原理や原則)を意識した質の高い学習をおこないたい。

○合否を分けた問題

【大問1 2(1)】

※クリックすると拡大します

・解説

 植物群系と年間降水量・年平均気温の環境条件の関係を表した図をもとにツンドラ・草原・砂漠の区別を問う問題。図の読み取り方を理解できればさほど難しい問題ではない。小学生にとって「ツンドラ」は聞き慣れない用語だったはず。困惑した受験生も多かっただろうが、降水量から草原と砂漠を区別できれば、残ったものをツンドラと判断できたのではないだろうか。知らない用語でも冷静に考えれば正解が導ける。

 こういう、はじめてみる言葉や問題に動揺しないという図太さが必要。初見の問題であっても情報を整理して考えれば解ける問題は多くある。難しくても恐れず解答を導く思い切りのよさが求められている。

・解答

:ウ :ア


◆社会(制限時間:40分/配点:100点)

 2015年度のJG社会は大問5題の構成で、全体のテーマは「離島」。大問1では島に関する地理の問題、大問2は対馬を題材にした地理と歴史の問題、大問3では流刑地・隔離地としての離島を考えさせる問題、大問4は世界の島々を題材にした問題、大問5はポツダム宣言・サンフランシスコ平和条約で扱われた島に関する問題が出題された。JGの社会は幅広い視野と正確な知識の理解力が問われる。漢字で正確に書くことも含め、入念な準備が必要とされる。

○合否を分けた問題

【大問3 問1・2】

※クリックすると拡大します

・解説

 問1の問題。JGの入試問題で「死刑」ということばが登場するのははじめてではないか。近年問題になっている冤罪、DNA鑑定、再審請求などに関心を寄せているかが問われている。そのまま用語を答えさせるのではなく、時事問題にひと手間加えるのが最近のJG社会。JGを目指す受験生ならば、免田事件や足利事件、袴田事件などを知っていてほしいもの。問2は問1同様、人権に関する問題である。JGは以前より人権に関する問題が頻出する。学校の教育姿勢が如実に表れている入試問題といってよいだろう。

・解答

問1:イ 問2:オ
 

◆国語(制限時間:40分/配点:100点) ※問題は割愛しました

 以前は文章3題構成のJGの国語入試問題だったが、2015年度は3年連続で文章2題構成であった。今後もこの構成で定着しそうだ。しかしながら、処理スピードが問われ、かつ論理性が追究される傾向に変化はない。また、文章を「具象」「抽象」に分けながら全体像を丁寧につかんでいく作業も求められている。なおかつ、幾つも登場する短記述をすばやく処理しなければならない。大問2の5択の選択肢あたりで苦労した受験生も多かったかもしれない。JGの国語では大人顔負けの「語彙力」「論理的思考力」を有していないとなかなか太刀打ちができない。

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