本書は、『ニューヨークのとけない魔法』を第1弾とする「ニューヨークの魔法」エッセイ・シリーズの第6弾だ。人と人とのささやかな触れ合いを、ニューヨークを舞台に描いている。
「世界一お節介で、図々しくて、孤独な人たち。でも、泣きたくなるほど、温かい」(第1弾の帯の言葉)
シリーズだが、エッセイは1話ずつ完結しているので、どの本から読んでもいい。そして、どの話も、会話のごく一部が和訳付きの英語になっているから、エッセイを読みながら英語を学べるお得感がある。
じわじわ口コミで広がり、お蔭様で30万部突破のロングセラーとなった。「ベストセラーの裏側」(日経新聞、5月13日付夕刊)で紹介されたように、「孤独な大都会で暮らしながらユーモアとお節介にあふれるニューヨーカーに、どこか生きにくさを感じる日本人が共鳴している」のではないかと思う。
本書では、出会ったニューヨーカーたちに「ここはどんな街?」と時に問いかけている。
セントラルパークで出会った女性は、「この街で退屈するなんて、あり得ない。いつも新しい何かが起こるから」と話す。
図書館の入口で私に先を譲ってくれた男性は、「人々は自分の周りに壁を作っているけれど、壁のひびを積極的に探している。ひびがあれば、それを突き破り、他人と触れ合おうとする」と語った。
カフェのテーブルを分け合った男性は「多くの国籍、民族的背景、宗教、人生観を持つ人たちが、手を取り合ってうまく暮らしている」と言う。
この街はさまざまな問題を抱え、時には些細ないざこざもある。混沌とし、矛盾も抱えている。それでも、カフェで同席した男性が言うように、これだけ多くの多種多様な人々が平和に手を携え合って暮らしているのは、奇跡ともいえる。
本書の解説は、『生物と無生物のあいだ』でよく知られる生物学者の福岡伸一氏。ニューヨークの魔法の謎に、鋭く迫ってくださった。
日経新聞のコラムの反響で、ネット書店などでもすぐに入手できない状態が続いたが、シリーズも続々と緊急重版がかかり、既刊本もちょうど書店に届いた頃だ。日常からちょっと離れて、ニューヨークの魔法にかかってみていただきたい。
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