30数年前、浪人生だったころ予備校近くの神田神保町の古書店街に歴史本を求めよく歩き、気に入った本を買っては当時並びにあったロッテリアで読み漁ったものである。
そんな自分の身に歴史好きが染み込んだのは両親が見ていた大河ドラマに影響されるところが大である。そして主体的にのめり込んでいったのは子どもの頃見たNHK人形劇ドラマの「真田十勇士」であり、その後同じNHKの「風神の門」というドラマで「真田幸村」という人物と「司馬遼太郎」という作家に魅入られてからである。その後柴田錬三郎『真田幸村 真田十勇士』、池波正太郎『真田太平記』等、そのたびに「真田幸村」への思いが少年ながら高まってきた……。
などと酒の席で友人につらつらと「幸村愛」を語っていたら(おそらく熱く語っていたのだろう)、その友人から「こんな本があるけど」と薦められたのが本書である。
小林計一郎著 『真田幸村』
正直「小林計一郎って知らないなぁ」と思い、手に入れて奥付を見ると初版1979年の同著が底本となっている。
1979年といえばこの時代の真田幸村像は江戸時代から脈々と脚色された歴史上の英雄であり、一方で「真田十勇士」に代表されるように忍者をあやつる非現実的な劇場的なイメージが日本人の中に定着していた。
あえて史実に基づいた真田幸村の評伝というものは、今でこそ形を変え多く存在するが、この時代には筆者の知るところでは他になかったのではないかと思う。その意味では非常にチャレンジャブルで、すこしオーバーな表現を使えば、その後の「真田幸村像の正常化」への道を切り開いた一冊ではないか。
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