東海林さだおさんの丸かじりシリーズ第三十六弾『サンマの丸かじり』に収録されている、「アンコのアンコだけ食い、いいのか」というエッセイを読んだ時の静かな衝撃は忘れられない。スーパーで手に取ったゆであずきの缶詰を缶切りでキコキコ開け、立ったままアンコを缶からじか食いするという内容。文字通り、身も蓋もないアンコ生活を赤裸々に書いてみせる大人の余裕に、私は身の程もわきまえずヤキモチを焼いた。
なぜヤキモチなのか。それは、私が『あんこの本』という本をしたため、今も細々と取材・執筆を続けるアンコ好きのはしくれだからである。このような無名のライターに解説という大役が回ってきたのも、シリーズ第三十七弾の最新文庫版である本書に「アンコかわいや」という一編が収録されているからなのである。
すでにご存知の方も多いと思うが、丸かじりシリーズは『週刊朝日』の長寿連載「あれも食いたいこれも食いたい」を定期的に単行本にまとめ、それをさらに文庫化したものである。二〇一七年一月十七・二十四日号の『週刊女性』によれば、連載開始から丸三十年、一四〇〇回を超えたそうだ。その偉業を取り上げたインタビューで「最近はお酒が飲めなくなって、甘いものに目覚めつつあります。なかでも、あずきが好きで羊かんやもなか、鯛焼き、あずきアイスもいいですね」と東海林さんが答えておられた。
もっとアンコ・エッセイがあるに違いない。そう思い立ち、手に入る限りの丸かじりシリーズを集め、アンコものに言及しているエッセイを探してコピーしてみた。見事に文庫一冊分くらいの厚さになった。丸かじりシリーズのアンコだけ食い。私家版『アンコの丸かじり』の完成である。その目次を一部、お見せしてみよう。
キンツバのチョロピリ(『タケノコの丸かじり』より/現在は絶版)
切り口の美学(同上)
「こし」か「つぶ」か(『タヌキの丸かじり』より/現在は絶版)
煮豆一族(『ゴハンの丸かじり』より)
苺と大福(『パンの耳の丸かじり』より)
水ようかんでひと踊り(同上)
アイスキャンディタイム(同上)
アンミツ構成員(『ホットドッグの丸かじり』より)
栗で悶悶栗蒸し羊羹(『おでんの丸かじり』より)
最中の真実(『うなぎの丸かじり』より)
豆大福の豆は何粒が適正か(同上)
甘いおかずの時代があった(同上)
愛すべきどら焼き(『どら焼きの丸かじり』より)
茹で栗ぽくぽく(同上)
饅頭茶漬け(『ホルモン焼きの丸かじり』より)
アンクリジャパンとは?(同上)
おはぎの真実(同上)
「あずきバー」をアイス(同上)
羊羹のニッチャリ(『ゆで卵の丸かじり』より)
アンパンのしみじみ(『アンパンの丸かじり』より)
アンコのアンコだけ食い、いいのか(『サンマの丸かじり』より)
小倉トーストだなも(同上)
アンコかわいや(本書より)
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