2016.03.18 インタビュー・対談

水谷豊ら役者たちが熱く語る、勧善懲悪に収まらない高橋克彦版・歌麿の魅力

『かげゑ歌麿』 (高橋克彦 著)

水谷豊ら役者たちが熱く語る、勧善懲悪に収まらない高橋克彦版・歌麿の魅力

本稿は、本書収録の「さやゑ歌麿」を原作とするドラマ「だましゑ歌麿II」(二〇一二年九月十五日・テレビ朝日系)の放送を前に、歌麿役の水谷豊さん、蔦屋役の岸部一徳さん、仙波役の中村橋之助さんに、撮影時のエピソードと“高橋克彦版・歌麿”の魅力について語り合っていただいたものです。

歌舞伎と浮世絵の縁

水谷 一本目の『だましゑ歌麿』に続いて、喜多川歌麿を僕が演(や)らせていただくにあたって、橋之助さんがいてくれるのは、大変に心強かったです。

岸部 僕も何でも橋之助さんに聞いてしまうんですけれど、何でも答えてくれる。すばらしい。

中村 そんなことはないですよ。歌舞伎役者という仕事柄、まあ、浮世絵と縁が深いところにはあるので……。

水谷 僕と一徳兄さんは、子供のときに切手を集めたくらいでね(笑)。

岸部 そうそう、浮世絵シリーズに「見返り美人」(菱川師宣)があったとか、そんな話をするくらい。

水谷 「見返り美人」は高くて手に入らなかったけど、女性が雨の中に湯屋から帰ってくる「雨中湯帰り」(鳥居清長)を手に入れて、それを切手帳に大事に貼ったりしましたよ。

岸部 さっきも、セットの中で「こんな本がありますよ」と、橋之助さんが持ってきてくれた資料を見ていたんです。それから、橋之助さんの目に、自分がどう蔦屋として映っているのか――違和感のない、普通の顔をしてもらえると、安心につながるんです。

水谷 三人というより、僕たちのこのチームみんなが、非常に仲がいい。夜も一緒によく出かけるんですが、ただ、食べて、飲んでというわけではないんですよ(笑)。昨晩も、橋之助さんには、「差し金」「二枚目、三枚目」「黒幕」といったような言葉が、どこからきているのか教えてもらいました。

中村 全部、歌舞伎からきている言葉なんですね。それだけ当時は、歌舞伎というものが、庶民の生活の中に溶け込んでいたということでしょう。たとえば、黒幕というのは、お芝居の中で夜の場面や、舞台転換のときに張られている黒い幕からきています。それがある時にパッと落ちると、本物がその裏から現われる。そんなわけで、黒幕という言葉が、表には出ないで後ろで操る人のことを指すようになったと言われています。

水谷 だから僕たち、夜も決して遊び回っているわけではありませんよ(笑)。

岸部 一緒にいると勉強になります。

水谷 今日もモニターに映った橋之助さんを見ていると、まさに浮世絵の中の役者の顔そのものでした。

中村 いえいえ、ただ顔が長いだけでして……(笑)。そういえば、歌麿も役者絵を描いていますね。今で言えば、役者絵はブロマイド的なもの。歌麿が役者に興味を持っていたというよりも、恐らくお小遣い稼ぎで描いていたんでしょうが、当時の歌舞伎役者はそれだけ人気者でもあり、アイドルみたいな存在だったんです。

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かげゑ歌麿
高橋克彦・著

定価:本体690円+税 発売日:2016年03月10日

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