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日本とインドが手を携えれば、中国の危険な膨張を「抑え込む」ことは可能だ!

日本とインドが手を携えれば、中国の危険な膨張を「抑え込む」ことは可能だ!

文:櫻井 よしこ

『日本とインド いま結ばれる民主主義国家 中国「封じ込め」は可能か』 (櫻井よしこ・国家基本問題研究所 編)

出典 : #文庫解説
ジャンル : #ノンフィクション

 ロシア同様、アメリカの足元を見透かした中国は南シナ海で傍若無人の侵略に及ぶ。オバマ大統領が14年4月末に日本、韓国、マレーシア、フィリピンを歴訪し、アメリカの同地域への関与は不変だと言明した直後の5月、中国は巨大な石油掘削施設を、ベトナムが激しく抵抗する中、南シナ海の海域に運び、掘削を開始した。圧倒的軍事力を保つ中国が要求すれば、軍事的劣位にある国は従わざるを得ないという中国の主張を南シナ海を舞台に地で行ったのだ。中国はその後も南シナ海の中沙、南沙諸島で着実に支配を確立し続けて今日に至る。南沙諸島ではフィリピン領有のジョンソン南礁を2年半余りをかけて奪い、埋め立て、14年夏現在、軍事施設と滑走路が完成間近である。

 この間、中国は「新型大国関係」という言葉を軸に対米外交を展開した。12年2月、まだ副主席だった習近平氏がワシントンを訪れ、新型大国関係について語っている。その内容は「相互理解と戦略的信頼」「知恵と相互の協力」「国際問題及び地球的問題の協力及び調整強化」に加えて「相互の核心的利益の尊重」である。

 中国は核心的利益を台湾、チベット、南シナ海、尖閣諸島と定義しており、新型大国関係は、アメリカに中国の核心的利益に関わることには口出しするなという内容であることがわかる。

 新型大国関係は、13年6月、国家主席となった習近平氏がカリフォルニア州でオバマ大統領と2日間にわたって行った首脳会談でも詳細に語り合われた。それを受け入れることは、尖閣諸島は日米安保条約第五条の適用対象だと主張してきたアメリカの対日政策とは矛盾する。にも拘わらず、オバマ政権は新型大国関係という言葉を安易に用い始めた。

 勢いづいた中国は13年11月には東シナ海に中国独自の防空識別圏を設け同空域を通過する航空機には事前の届け出を要求した。防空識別圏を領空であるかのように見做す中国に対して、日本政府が民間航空各社に飛行計画を中国側に提出するのは控えるよう通達したのとは対照的に、アメリカ政府は「一般論」としながらも、「外国の航空情報に合わせることが望ましい」と発表した。対中国で日米の対応に微妙なズレが生じているのである。

 アメリカは中国の南シナ海、東シナ海での振る舞いや国内における人権弾圧、少数民族の虐殺などを受け容れ難いとしながらも、経済的に切れない中国と事を構える意図はない。対中関係を維持しながら、日本、東南アジア、豪州、インドとも良好な関係を保つ両軸外交がアメリカの基本路線である。日米関係は必ずしも米中関係に優先するものではなく、日米関係と日中関係は合わせ鏡のようなものなのだ。日本をはじめアジア諸国がアメリカ外交を注意深く分析しなければならない所以(ゆえん)である。

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日本とインド いま結ばれる民主主義国家 中国「封じ込め」は可能か
櫻井よしこ・国家基本問題研究所・編

定価:本体700円+税 発売日:2014年11月07日

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