- 2014.11.21
- 書評
日本とインドが手を携えれば、中国の危険な膨張を「抑え込む」ことは可能だ!
文:櫻井 よしこ
『日本とインド いま結ばれる民主主義国家 中国「封じ込め」は可能か』 (櫻井よしこ・国家基本問題研究所 編)
そして、インドのモディ首相は「インドの安倍晋三」と呼ばれる程、安倍首相と共通点が多い。本書にも「印日が手を組めば中国に勝てる」という論考を寄せている、インドの著名な戦略研究家、ブラーマ・チェラニー氏は、モディ氏の特徴を安倍氏のそれになぞらえて「穏やかなナショナリズム、市場経済への重心、新たなアジア主義、アジアの民主主義国との戦略的パートナーシップ網の確立」(「THE DIPROMAT」14年5月16日)と表現した。
両首相のもうひとつの明らかな共通点は、中国の領土拡張という現実の脅威に直面していることだ。中国が尖閣諸島を中国領だと地図上に明示しているように、インドが実効支配する北東部のアルナチャルプラディシュ州も中国は中国領として記載している。インドは日本の尖閣問題に関しては中立の立場を守り、南シナ海の領有権問題でも中立を保ってはいるが、インド外交からは一歩も引かずに中国とわたり合う明確な姿勢が読みとれる。
モディ首相は14年8月末に訪日し、日本を「(外交関係で)最も高い位置づけにある国」と定義し、日印連携強化を「特別な戦略的パートナーシップ」という言葉で表現した。日印間では原子力協定、救難飛行艇「US2」の輸出、新幹線のインドへの導入など、日印関係を強化する具体的案件が進行しつつある。非同盟主義のインドは日印の「2プラス2」には踏み込まなかったが、対日親和性はインド外交全般から読みとれる。
訪日後の9月18日、モディ首相は習近平国家主席をニューデリーに迎える一方で、大統領のムカジー氏をベトナム訪問に派遣したのである。それだけではない。中国と南シナ海で激しく対立するベトナムはロシアから最新のキロ級潜水艦6隻の供与を受けたが、これをインド海軍が技術指導している。
インドはまた、日本の準同盟国と言ってよい豪州とも深い絆を有する。急速に強化される日印豪の外交、安全保障上の相互協力関係は、アメリカの空白を埋め、対中牽制の枠組みとなる。
日印豪の新たな関係は始まったばかりだ。現在進行形の世界秩序の大変化の中で、日印豪を主軸とする海洋民主主義国家の連携の重要性はより深まっていく。本書で焦点を当てた日印関係の未来を、心ある読者とともに今後も注意深く見詰めていきたいと思う。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。