本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
日本とインドが手を携えれば、中国の危険な膨張を「抑え込む」ことは可能だ!

日本とインドが手を携えれば、中国の危険な膨張を「抑え込む」ことは可能だ!

文:櫻井 よしこ

『日本とインド いま結ばれる民主主義国家 中国「封じ込め」は可能か』 (櫻井よしこ・国家基本問題研究所 編)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #ノンフィクション

 いまひとつの問題は中東である。アメリカがシリアへの軍事介入を見送ったことは、結果として中東におけるテロリスト勢力の跋扈(ばっこ)を許した。アルカイダから派生した超過激な「イラク・シリアのイスラム国」(ISIS)が、シリアからイラクにまたがる広範な地域を侵攻した。

 アメリカのジャーナリスト二人を処刑した残忍な映像をインターネット上に公開したイスラム国の所業にアメリカ世論は刺激され、オバマ大統領は14年9月22日、遂に、イラクだけでなくシリアへの空爆にも踏み切った。ウォールストリートジャーナルはこれを戦争だと断じ、過去25年間で、3度目の戦争にアメリカは突入したと喝破した。

 オバマ大統領は、地上軍は派遣しないと繰り返すが、そこでとどまり得るのか、イスラム国の勢力を阻止出来るのかを含めて、展望は見えない。明らかなのは、アメリカがアジアに割(さ)く余力はそう大きくはないということだ。

 アメリカが中東に手をとられる国際情勢は日本がより自主的に自らの道を切り開かなければならないことを強烈に示している。日本が自国の立場を強化し、自力をつけるのに欠かせないのが、インド、豪州、東南アジアとの連携である。

 安倍首相は12年12月の就任以来、1年8ヵ月で49ヵ国を訪問したが、中でもインド、豪州との関係強化こそ、日本の戦略の基本をなすものだ。

 アメリカ、日本、豪州、インドを結べば自ずと中国の無謀な侵略を思いとどまらせる枠組みの基本形が出来る。それは自由と国際法、民主主義を尊ぶ海洋国家の連携であり、中国やロシアという、国際法も人間の自由も蔑ろにした大陸国家の力による支配に立ち向かう枠組みである。ただ、どの国にも中国包囲の意図はなく、また相互に深い経済関係を擁する現在、かつてソ連に対して言われたような「封じ込め」的な中国包囲や中国封鎖は概念上も実際上も不可能に近い。それでも中国の前で日米豪印が強く結束することが、国際法や条約に基づいた外交、安全保障政策を選択するよう中国に促す力となる。少なくとも軍事的な膨張を「抑え込む」ことは決して不可能ではないだろう。

 安倍首相の14年7月7日の豪州訪問は明らかに対中牽制の戦略目標に添ったものであり、両国は相互の関係を「特別な関係」と位置づけ、準同盟関係を築くに至った。両国は14年6月11日に外務・防衛閣僚会議(2プラス2)を開き、日本にとって最も重要な技術のひとつと言ってよい潜水艦技術のオーストラリア移転に関しても話し合った。両国は過去の戦争の歴史を乗り越え、確実に戦略的パートナーとして、共に歩み始めた。

【次ページ】

日本とインド いま結ばれる民主主義国家 中国「封じ込め」は可能か
櫻井よしこ・国家基本問題研究所・編

定価:本体700円+税 発売日:2014年11月07日

詳しい内容はこちら

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る