- 2015.12.19
- インタビュー・対談
手紙こそ親から受け取る素晴らしい財産――千住真理子さんインタビュー(後編)
「本の話」編集部
『千住家、母娘の往復書簡 母のがん、心臓病を乗り越えて』 (千住真理子・千住文子 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
大切な人を失った後の思いを握りしめて
――寂しいっていうお気持ちは亡くなられて2年以上経ちますが、あまり変わりませんか?
千住 変わらないですね。失った寂しさというのは、やはり失った寂しさなんですね。自分を生んでくれた母親というのは2人はいないわけで。替えがきかないというか。そういうことを考えると、父親なんかもそうだし、私たちを可愛がってくれたおじいちゃまおばあちゃまも、1人1人亡くなっていってしまった――失われた命への思いというものは、おそらく誰にとっても、ずっとそのまま遺された者の中にあるんだろうなぁと思いますね。その気持ちを排除するのではなく、大切だったんだなという肉親を失った後の思いをしっかりと握りしめて生きていくというのは、逆に大切なことだと思います。
――お母さまが真理子さんに残したメッセージの中で印象に残っていることはありますか?
千住 もうね、沢山あるんですよねぇ。この往復書簡の中でも沢山あるんですけれども、ボランティアに対するやりとりというのは、私にとってすごく印象に残っていますね。ボランティアについて意義のあるやり方にするにはどうすべきかな、というのは自分の中でいつも考えながらやっています。ただ行って、ただ弾けばいいってことではなく、やっぱりやるからには、どんな場所であってもそこが芸術空間になるようにという思いを込めてやった場合には、ボランティアがボランティアでなくなっていくんですね。自分の中で、それもまた厳しい場になっていく。
――本書の中でも出てきますが、病院で死を目前にした人々を目の前にして弾く、その人々の気というのはその場で伝わってくるものですか?
千住 すごく伝わります。だからボランティアの場で弾くと、水を浴びせられるほどの目の覚める思いがいつもしますね。そういう方々は一瞬一瞬を本当に大切に生きているわけです。しかも、まさに母が最終的にそうだったように、自分の目前に迫っている死について、生きること死ぬことを瞬時途切れることなく考えている人たち――そういう人たちにとって「音楽」や「生きる」とは何だろうなということが、ボランティアで演奏することによって、思い知らされるのです。
そのような場では優しい気持ちで弾くというよりも、自分にとって厳しい場となります。考えも及ばないような経験をし、乗り越えようと頑張っている人たちの人生というのは本当に濃い。そういった方々の前に出ると、自分より何倍も大人だなと思いますね。それが子どもであっても。だからそこで、自分自身が見直せたり学ぶことの方が多いです。
-
『皇后は闘うことにした』林真理子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/29~2024/12/06 賞品 『皇后は闘うことにした』林真理子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。