書評

寄り添えるかもしれないという希望は、手におえる男ではないと打ち砕かれる、影山という男

文: 壇 蜜 (タレント)

『ブルース』(桜木紫乃 著)

 影山と関係するそれぞれの女たちは皆何かしらに困窮している。死別で、離婚で、借金で……誰かや何かにすり減らされてひりひりと痛むような乾いた心を持っている。女たちは皆まっとうになりたくない訳ではないのに、どういうわけか好転しない状況。そこにある程度の「まっとう」を手に入れ、今もなお貪欲に模索している影山が現れる。ひかれない訳がない。逆境を味方につけた匂いをかもす男として女たちに差しのべられる手に指が六本あったときも、六本めの痕跡だけになったときもあっただろう。どちらの状況でも、私ならそれを振り払う強さはない。もしかすると、影山の指が六本なのは、より多くの困窮にあえぐ者にチャンスを与えるために余分に備わったのではないかとすら思う。自らの手でその余分を切り落としても、透明な六本目の指が出会いのセンサーとなって彼の中に補完されていることも妄想した。影山と「指切りげんまんしたいな……」というしょうもない欲望に変化するのも早かったが。

 やはり作品と私との関係は三年前のまま。年はとった。しかし自分を取り巻く環境は大きく変化していない。強いて言うなら、男が一回変わったくらいだ。これからも影山と指切りげんまんしたい自分を葬り去ることなく、のろのろ生きていこうかと。桜木先生、またお会いしたいな……。

ブルース桜木紫乃

定価:本体620円+税発売日:2017年11月09日