- 2021.10.11
- インタビュー・対談
「子供は親を選べる。生きていく術を教えてくれた人も親だから」 桜木紫乃が描く、“毒親”から解放される“インモラル”な方法
桜木紫乃さん×もんでんあきこさん#2
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
作家デビュー20年目を迎え、最新作『ブルースRed』を刊行した桜木紫乃さん。累計150万部越えの『エロスの種子』の著者もんでんあきこさんとは、ともに北海道出身。縁あって『ブルース』のコミカライズをしたもんでんさんと桜木さんが、「愛とエロス」について熱く語り合った。(全2回の2回目。#1より続く)
新作『ブルースRed』は娘・影山莉菜の物語
もんでん 『ブルース』から、新作『ブルースRed』の刊行まで7年が経っています。影山博人と8人の女を描いて、今度は、博人とは血の繋がらない娘・影山莉菜の物語。難しさはありましたか?
桜木 30枚ずつ、10話を積み重ねていったので、時間はかかってしまいましたね。
影山博人が、ひたすら陰を歩いている男だとしたら、博人と血の繋がらない娘・莉菜は、死に場所を求めて、年を重ねていく女。博人の一粒種の武博は、光の当たる道を受け持っている。
もんでん 武博は、影山博人がなりたかった「男の理想形」になっていきますね。
桜木 そして、博人、莉菜、武博と、血の繋がらない親子三代の物語なんです。「親子何代」という話がよっぽど好きなんですね、私は。
もんでん 初めての絵本『いつか あなたをわすれても』(集英社/絵・オザワミカ)でも、母と娘、祖母という親子三代の物語を書いてらっしゃいますね。
桜木 そうなんです。いろいろと、親と子の話を書いてきて、最近、「子供は親を選べる」とはっきりと言い切れるようになってきたんです。自分を産んでくれた人も親。自分に生きていく術を教えてくれた人も親。そして、私たちは、親という存在を飛び超えていけるはずだ、と。そんなことを模索しながら、小説を書いている気がします。
「自分にとって小説って、インモラルなもの」
もんでん 毒親などという時点で、親という存在に縛られているんですよね。
桜木 そんなことを言う暇があったら、さっさと親の腹から出てしまえ!と思うの。エロスに紛れて、『ブルース』『ブルースRed』ともに、そんなことも伝えられたらいいなと思っています。もんでんさんも、エロスに紛れて、似たようなことを言っているんじゃないかなぁと思うんですがどうですか?
もんでん 通底している部分が、桜木さんとはある気がします。
桜木 私は、極端に夢がありすぎたり、正義感にあふれている小説を読むのが辛いんです。自分にとって小説って、インモラルなものなんです。だから真正面から正義を語っちゃいけない。小説は人を許すもので、作者は人を許せなくちゃいけないって教わってきました。
もんでん そういう意味で言ったら、新作の『ブルースRed』には、大いなる許しがある。
桜木 ありますか?
もんでん あるある。相当許さないと、あのラストシーンはなかったと思います。
莉菜は、釧路で博人を死なせてしまった。その釧路にこだわって、釧路で暮らしますよね。『ブルースRed』は、重い十字架を背負った莉菜が、それを降ろすまでの物語です。
桜木 莉菜が釧路にいたのは、自分への罰です。
もんでん その罰から逃れることができていたなら、莉菜はどんな風に生きたんだろうか、と想像すると切ない。莉菜が背負ったものは、とてつもなく重いけれど、その重さがあったから、ポテンシャルを発揮できたんでしょう。
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