- 2021.10.11
- インタビュー・対談
「二人で雪まつりに行ったりしていたら『エロスの種子』が大ヒットして…」 桜木紫乃ともんでんあきこはなぜ“女で身を滅ぼすキャラクター”が好きなのか
桜木紫乃さん×もんでんあきこさん#1
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
作家デビュー20年目を迎え、最新作『ブルースRed』を刊行した桜木紫乃さん。累計150万部越えの『エロスの種子』の著者もんでんあきこさんとは、ともに北海道出身。縁あって『ブルース』のコミカライズをしたもんでんさんと桜木さんが、「愛とエロス」について熱く語り合った。(全2回の1回目。#2へ続く)
コミカライズが開いた新しい世界
桜木 もんでんさんにコミカライズしてもらった『ブルース』(上下巻・集英社)が発売になって、新しい世界を見せてもらえたことが、本当に嬉しかったんです。
もんでん 原作は、謎の男・影山博人をめぐる8人の女たちを描いた小説ですから、それを漫画として、どう読ませるか。唸りながら描いて、コミカライズが出来上がるころには、すっかり「自分の物語」になっていました。その中でも、影山莉菜という人物が、とても思い入れのあるキャラクターになっていたので、彼女が主人公になった新作『ブルースRed』がとても切なくて……。
桜木 莉菜が愛されている。嬉しい。でも、当初考えていたラストシーンとは違う結末になったんですよ。
ところで、初めてお会いしたのは、もんでんさんの代表作『エロスの種子』(ヤングジャンプコミックス)第1巻の刊行を記念して、対談をしたときでしたね(『エロスの種子』第2巻に収録)。もんでんさんの作品は、とってもエロティックなんだけれど、北海道の人間ならわかる湿り気と乾き方なんですよね。このときにもんでんさんが、「私、33年間、絵以外で稼いだことがないんです」と仰って、一瞬で気持ちを持って行かれました。かっこ良かったです。
もんでん かっこ良く言ったわけではなくて、社会経験がまったくなくて、絵だけしか描いていないということが、本当に恥ずかしかったんですよ。
私もワクワクしていたんですよ。『ホテルローヤル』(集英社)を読んで感激して、直木賞作家に会いたい! というラブコールが実現したんですから。『エロスの種子』でストリッパーを描くときに(「マリーゴールド」第1巻に収録)、桜木さんの『裸の華』(集英社)を拝読して、踊り子たちの世界観を学ばせていただきました。
そういえばあのとき、「桜木さんはお好きだろうな」と思って、自作の『女衒夜話』(クイーンズコミックスDIGITAL)をお持ちしたんですよね。
桜木 ど真ん中のストライク。好きになりましたとも(笑)。これを読んで、『ブルース』で書いた影山博人のことを思い出しましたから。
二人で雪まつりに行ったりしているうちに…
もんでん 思えば、二人とも、女で身を滅ぼすキャラクターが好きですよね。
桜木 もんでんさんも、私も、滅ぼし続けて、はや50代(笑)。
住むところも近いので、一緒に食事に行くようになって、二人で雪まつりに行ったり、お酒を飲んだりしているうちに、『エロスの種子』に火がついて大ヒットになりました。
もんでん 「紫乃ちゃん、どうしよう」って相談しましたね(笑)。
桜木 当時既に、大沢在昌さんの『北の狩人』を、『雪人 YUKITO』(ビッグコミックス)として、コミカライズされていたんですよね。大沢さんが「俺のところに結構な印税がはいってくるんだから、もんでんさんはもっとだよな」と笑っていました。
そりゃ売れますよ、もんでんさんの絵の繊細さは当然のこと、情報量の多い小説を独自の視点で切り取る作業は、みごととしか言いようがないんです。
もんでん 『ブルース』のときがまさにそうですが、原作の小説を自分の漫画に落とし込んでいく作業には、発見が多くて勉強になりました。スピード感と、山を作る場所が小説と漫画は違うんです。原作をシンプルにして、絵になるところを膨らましていく。
もう一つ言えば、漫画に合った文章というのがあるかもしれないですね。読者にも、漫画の読み方っていうのが染みついていますから、その文法の中で、いかに分かりやすく描くか。私は、読みやすさにはこだわりを持って書いていて、「ここにこれが来たら気持ちいいよね」というコマを描いている。そこに辿り着くには、時間がかかりましたよ。
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